朝鮮王朝の19代王として知られた粛宗(スクチョン)は、「仕事はできるし遊びも派手」というタイプの国王だった。政治的な業績が多かったのだが、同時に女性問題で多くのトラブルを起こしている。そんな粛宗の側室だったのが淑嬪(スクピン)・崔(チェ)氏だ。
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生まれたのは1670年。もともとは王宮で水汲みの下働きをしていたと言われている。大変な美貌の持ち主で、粛宗に寵愛されて側室になっている。ただし、政治の裏でいろいろ暗躍することも少なくなかった。
そういう女性だったので、歴史的にはあまり評判が良くなかった。過去の時代劇でも悪役として登場することがあったほどだ。そんな淑嬪・崔氏の評価を180度変えてしまったのが、「時代劇の巨匠」イ・ビョンフン監督が演出した時代劇『トンイ』であった。
この名監督は淑嬪・崔氏を主人公にするにあたり、「トンイ」という架空の名前を作ってヒロインに設定した。過去の良くないイメージを払拭したいという気持ちもあったかもしれない。その上でキャスティングしたのが、とても明るい印象を持ったハン・ヒョジュだった。
イ・ビョンフン監督は「彼女の演技力はまだ不安定な部分がある」と考えており、自信満々でハン・ヒョジュを選んだわけではなかった。それより、「既存の女優にない未知の可能性」に注目し、将来性を見込んでハン・ヒョジュをヒロインに起用したのだ。
それは、大きな賭けでもあった。もしも、ハン・ヒョジュの演技力不足が露呈すれば、ドラマ自体が散々の状態になってしまう危惧もあった。それでも、イ・ビョンフン監督はハン・ヒョジュが持っていた「若さと明るさ」を最優先してヒロインを選出した。
結果を見れば、イ・ビョンフン監督の眼力の確かさが証明された。撮影が始まってからのハン・ヒョジュは演技力に問題がなかったし、経験を積むごとに素晴らしい存在感を見せるようになった。
何よりも、ハン・ヒョジュが持っている天性の明朗さは、『トンイ』というドラマの大ヒットの大きな要因を引き出した。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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