最初に『トンイ』について触れる前に、同じイ・ビョンフン監督の作品である『イ・サン』の話をしたい。それは、『イ・サン』と『トンイ』の二つのドラマが深くつながっていることを連想させる場面があったからだ。
まずは、先に制作された『イ・サン』(2007年の制作)から見てみよう。
第44話で英祖(ヨンジョ)は、病状が重く死期が近いことを悟り、病床にヒロインのソンヨン(22代王・正祖〔チョンジョ〕の幼なじみ)を呼ぶ。彼女に描いてほしい絵があったからだ。ソンヨンの絵の旨さは以前から知っていた。
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そして、ソンヨンは英祖から指輪を贈られる。それは、円形の翡翠が二重になった指輪だった。美しい光沢を見せている。英祖はその指輪をソンヨンに渡しながらこう言う。
「これは余の母が余に残してくださったものだ。受け取りなさい。余に貴重な絵を描いてくれたお礼として、これをそなたにあげよう」
ここで英祖の母といえば淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)のことで、『トンイ』の主人公のモデルになっている。
恐れ多くてソンヨンも辞退するが、結局は感激しながら受け取った。
英祖は1776年に亡くなっている。ドラマの上とはいえ、英祖がソンヨンに指輪を贈ったのは1776年ということになる。
それから80年ほどの時間をさかのぼってみよう。ドラマ『トンイ』の第31話の一場面だ。
粛宗(スクチョン)の寵愛を受けたトンイは、愛情の証として王から翡翠の指輪を贈られた。この瞬間に、『イ・サン』を見ていた人はニヤリとしたはずだ。
先に制作された『イ・サン』で翡翠の指輪を出し、3 年後に制作された『トンイ』で再び同じものを出す。設定のうえでは、両場面の間には80年の時間差がある。その長き時間を越えて同じ指輪が存在することで、形のうえで『トンイ』と『イ・サン』はつながったのである。
同時に視聴者は、トンイが英祖を産んで立派な王に育てた、ということを二つのドラマを通して実感できたのである。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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