テレビ東京の韓流プレミアで放送されている『イ・サン』において、ハン・ジミンが演じたソン・ソンヨンは、本当に誰からも好かれる好感度抜群のキャラであった。出身が低くとも図画署(トファソ)の茶母(タモ)になり、正式な画員でないのに一生懸命に務めて一流の絵師になった。そういう意味では、努力して自分を大いに成長させるという理想的な女性だった。
【関連】『イ・サン』の恋人ソンヨンの正体…ナゾ多き「魔性の女」?
さらにイ・サンの幼馴染であったが、そのことを絶対に利用しなかった。ソンヨンは常に控えめであり、陰ながらイ・サンを応援していた。実際にはイ・サンを心から愛していたのだが、そういう素振りも見せなかった。
そんなソンヨンをイ・サンは即位すると「ぜひそばに置きたい」と願っていた。しかし、彼女は恵慶宮(ヘギョングン)から「絶対にイ・サンに近づくな」と釘を刺されていた。その言葉を守ってソンヨンはイ・サンの願いにも応じなかったのだが、やはり愛し合っている二人を止めることはできない。
最終的にソンヨンはイ・サンの側室となった。ここに至っても恵慶宮は強硬に反対し、ソンヨンを側室だとは認めなかった。彼女にとっては本当に心苦しかったに違いない。それなのにソンヨンは「自分が王室を騒がせてしまって申し訳ない」と心から詫びるのであった。
イ・ビョンフン監督の作品には人間の喜怒哀楽をはっきり示す登場人物がたくさん出てくるのだが、その中でもソンヨンというのはまさに「聖女」と呼ぶにふさわしい人物だ。
しかも、演じるハン・ジミンは情感豊かな女優であり、ソンヨンという役を「美しい恥じらい」を表現しながら見せてくれた。まさに、ハン・ジミンが演じたことによってソンヨンがさらに純粋なキャラクターに昇華していったのだ。
それはハン・ジミンにも言えることだろう。彼女にとってのソンヨンは女優としての自分の可能性を広げてくれるキャラクターであった。そういうヒロイン役を演じることができて、ハン・ジミンは本当に幸せだったことだろう。
文=大地 康
■【歴史コラム】『イ・サン』のソンヨンが史実で側室になった経緯…ドラマとどう違う?
前へ
次へ