傑作時代劇『イ・サン』も後半になると、イ・ソジンが演じるイ・サンが政治改革に突き進んでいく姿が堂々と描かれていた。しかし、政敵が多くてイ・サンも気苦労が絶えなかった。なにしろ敵対する老論派の高官たちはイ・サンが行なう政策にことごとく反対するのだ。それゆえ、イ・サンは本当に痩せてしまうほどであった。
【関連】【『イ・サン』の恋人ソンヨンの正体】ナゾ多き「魔性の女」だった?
そんなイ・サンを心から気遣っていたのがソンヨン(ハン・ジミン)だ。二人は幼馴染で気心が知れている。しかも、イ・サンとソンヨンはお互いに心から愛し合っていた。
もちろん、身分が違いすぎるので率直にその心情を明かすことはできなかったが、二人は何も語らずとも信頼しあっていた。特にソンヨンはやつれが目立つイ・サンのそばに仕えて「少しでも安らぎを提供できれば」という気持ちが強かった。
ただし、イ・サンの母親の恵慶宮(ヘギョングン)が絶対に許さなかった。彼女は、ソンヨンこそがイ・サンを惑わす魔性の女と見なしていたのだ。とにかく孝懿(ヒョイ)王后がイ・サンの後継者を産むことを願っており、ソンヨンは邪魔でしかないのだ。
そんな恵慶宮は、孝懿王后が子供を産めないと悟ると、今度は洪国栄(ホン・グギョン)の妹をイ・サンの側室にしようと画策した。その一方で、少しでもイ・サンに近づくとソンヨンは恵慶宮によって激しく追い出されてしまっていた。
ソンヨンにとって、それはとても辛いことだった。涙もとまらなかった。やむなくソンヨンはイ・サンから離れようとした。しかし、そう思えば思うほど心が張り裂けるように悲しかった。
こうしたソンヨンの揺れ動く気持ちを、ハン・ジミンは哀しみを込めて繊細に表現していた。その姿を見ていると、視聴者もソンヨンを応援したくなるに違いない。自分のためではなく常に愛する人を最優先に考えるソンヨンの心情をハン・ジミンが愛らしく演じ抜いて、『イ・サン』では究極的なラブストーリーの要素がますます強くなっていた。
文=大地 康
■【関連】【本当は怖い⁉】名君イ・サンのゾッとするような「裏の顔」とは?
前へ
次へ