『100日の郎君様』は、韓流ドラマによくある記憶喪失を織り交ぜつつ痛快なエピソードと機知に富んだ展開が特徴になっていた。主人公は華麗なる朝鮮王朝の世子(セジャ)であるイ・ユル。この男を演じるのはEXOのD.O.(ディオ)として知られるド・ギョンスだった。
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イ・ユルは幼い頃に悲劇に見舞われ、成長するにつれて人を信用しなくなった。当時、王宮を牛耳っていた悪徳高官の陰謀により、イ・ユルは暗殺の危機に瀕するも、九死に一生を得て善良なる村人たちに救われる。しかしながら、記憶喪失となり、村の農民のウォンドゥクとして生まれ変わる。
ウォンドゥクはもともと朝鮮王朝の世子として華やかな王宮生活が深く身に刻まれているので、庶民の食事に関する知識は皆無だった。
ある日のこと、彼は市場の賑やかな食堂で、クッパに舌鼓を打っていた。しかし、彼は勘定を支払わずにその場を立とうとして、騒動を引き起こしてしまう。それでも、ウォンドゥクは確かに「庶民の味」を心から楽しんでいたことだろう。
だが、朝鮮王朝の時代には、身分制度が食生活をも大きく左右していた。例えば、供されるおかずの皿数までが身分により厳然と決定されていたのだ。これを飯床(パンサン)と称した。米を主食とし、それに伴うおかずを組み合わせた献立が提示された。
王族たちは、おかずを入れる12の皿(チョプ)によって豪華な食事を供されていた。
貴族階級の両班(ヤンバン)の食事は9品に限定されていたが、それでも素晴らしいご馳走であった。また、下級官僚が多かった中人(チュンイン)の食事は、7品または5品に制約されていた。
けれど、人口の大部分を占める庶民のおかずは3品が一般的。食卓に上がるのは、ご飯一膳、スープ、キムチ、そして山菜のナムルであった。飢饉の時には、食べ物がないため、よもぎを入れた麦餅やどんぐりを食べて生き延びていた。
しかし、この苦難だけは、豪華な王宮生活に慣れたウォンドゥクにとって理解不能であった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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