人気女優のハン・ジミン。もしも「彼女の出演ドラマで一番印象に残っているのは何ですか」という質問があったら、多くの人が『イ・サン』という作品を挙げるのではないだろうか。なぜなら、このドラマではハン・ジミンの演技が特に光っていたからである。
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彼女が演じた役は、ヒロインのソン・ソンヨンである。イ・ソジンが扮した主人公イ・サンと幼馴染という設定であり、後にイ・サンに愛される存在であった。その時のハン・ジミンの愛くるしい笑顔は、日本のファンにも強烈な印象を残している。
しかし、俳優であれば誰でも様々なキャラクターを演じなければならない。ハン・ジミンも清楚な役柄ばかりというわけにはいかないのだ。
場合によっては悪役を演じなければならないこともある。そんな時、ハン・ジミンが自ら悪役に挑戦したのが映画『王の涙―イ・サンの決断―』だった。主役はヒョンビンであり、彼がイ・サンを力強く演じていた。
そのイ・サンの最大の政敵となっていたのが貞純(チョンスン)王后であり、演じたのがハン・ジミンだ。
貞純王后は、イ・サンの祖父であった英祖(ヨンジョ)の二番目の妻だった。イ・サンの父であった思悼世子(サドセジャ)の餓死事件の際は、思悼世子の悪評を英祖に歪めて伝えたと言われている。
まさに典型的な悪女であった。ハン・ジミンも出演したドラマ『イ・サン』では個性派女優のキム・ヨジンがこの貞純王后に扮していた。本当に憎たらしい役であった。
そんな女性をハン・ジミンが演じるというのは大きなチャレンジだった。特に彼女は、それまで心がまっすぐな女性を演じていたので、初の悪役は荷が重かったはずだ。
しかし、結果は正解だった。落ち着いた表情で貞純王后の陰謀を冷静に演じきり、かえって凄味が増していた。こうしてハン・ジミンは、映画『王の涙―イ・サンの決断―』で演じられる役の幅を広げた。
それにしても、ドラマ『イ・サン』で聖女のような役を演じたハン・ジミンが映画では貞純王后という悪女に扮するとは……。本当に意外なことだった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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