ドラマ『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』(以下、『私のおじさん』)『ホテルデルーナ』などで女優としての地位を固めてきたイ・ジウン(=IU)が、『ベイビー・ブローカー』で商業映画デビューと同時にカンヌ国際映画祭に参加する喜びを味わった。
彼女は「すべてのことに実感がわかない。ここがカンヌなのか韓国なのか分からないほど忙しいので、カンヌから帰ってきた数日経ったけどまだ実感がない」という。
『ベイビー・ブローカー』では赤ちゃんポストに赤ちゃんを預けて去ったソヨン役を演じた。心の中に傷があるが、胸の内を明かさないという点で、『私のおじさん』のイ・ジアンと似ている。
彼女は「私は大げさに表現する演技より、控えめな演技のほうが合ってる気がする。普段プライベートでも感情を表すより、心の中で考える時間が多いのでそういう表現のほうが気楽だと思う」と説明した。
「初めて台本を読んだときも、序盤はジアンと似ていると思った。ただ、監督と話し合った大きな違いは、ジアンがほとんど表現しない人なのに比べてソヨンは我慢できない人ということ。そういう点では違い過ぎると思う。でも監督が『私のおじさん』を見て私を起用したので、ジアンから持ってこれる部分は持ってこようと努めた。
あまりにも違う部分では、今までお見せしたことのない新しい姿をお見せしようと思ったのもある。ある部分では監督からもジアンと違う表現にしてほしいという指示があった。ソヨンはたくさん考えて話すキャラではないので、考えてからストレートに表現しようとした」
今回は、悪口をいうシーンもあるという。そのことについては「周りにアドバイスを求めたりはしていない。自分ですごく悩んだ。両親の前で悪口のセリフを言って、『どう?ぎこちない部分は言って』と練習したのを覚えている。マネジャーの前でも『本当に悪口っぽい?』と演技を見せて、『怖かったよ』『ここでシーって言ってみて』という具体的なフィードバックをもらった」というエピソードを明かした。
ソヨンは母親、売春など、イ・ジウンが経験したことのない設定のキャラクターだ。彼女は「出演を決めて台本を分析し、どんなふうに表現するか考える過程では、確かに難しい部分があった。でも結局人間同士で共有する感情の領域が似ている部分もあるのではないかという気持ちで近づこうとした。お母さんや、出産したばかりの知人に『妊娠した時はどうだった?』『辛い瞬間はいつ?』『出産後に泣いたことはある?』などを聞いた記憶がある」と語っている。
最初にもらった台本にはソヨンの情報が多くなかったとか。
「ソヨンが自分の人生と考えをすべて吐き出したという前提のインタビューを監督からもらった。実は台本を読んだ時より、そのインタビューを読んでから考えすぎてしまった。台本にはソヨンが自らを可哀想に思うシーンが多くない。暗い過去が大変だったとかを露骨に話すシーンはなかったが、インタビューではもう少しリアルにソヨンの人生の道のりが表現されていた。だから私より短い人生の中でいろんな事件を経験した人を、はたして表現できるのか?』というプレッシャーもあった。ソヨンが気の毒だった瞬間は、自分に対する哀れな気持ちが大きくないことだった。人は誰もが自己憐憫を感じるのに、彼女は自己憐憫を感じる暇すらない日々を送ってきたのが可哀想だった」
映画の中で最も難しく感じたシーンについては次のように語っている。
「実は簡単なシーンは1つもなかったけど、強いて挙げるなら映画のクライマックスとも言える『生まれてくれてありがとう』というシーンだ。みんなにとって大事なシーンだったので、NGを出してはいけないというプレッシャーと、声だけで伝えなければならず、どんな声を出そうかすごく悩んだ。個人的に違うバージョンも用意してたけど、初めてのテイクにOKが出て『監督が気に入ったなら私もいい』と思った」
『ベイビー・ブローカー』はイ・ジウンにとってどんな作品として残るだろうか。イ・ジウンは「商業映画デビュー作なのでそれだけでも意味深い作品だ。デビュー作にもかかわらずとても重要な役柄を務めたし、誰かが私のことを信じてくれたから出来た役柄なのでそれに対する感動が大きい。映画ではお見せしたことがほとんどない新人なのに、私を信じてくださった監督やスタッフ、俳優の先輩たちに恩返しする役者になるべきだと、長く自分にムチを打てる出来事になりそうだ」と述べた。
イ・ジウンが主演する『ベイビー・ブローカー』は、日本で6月24日から全国ロードショー。
(記事提供=OSEN)
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