人気俳優が断言した言葉はとても意味が深い。あのパク・シフが「これこそ私の代表作」とはっきり語ったのである。
韓国で高い視聴率を挙げた作品に数多く主演した彼が万感の思いで語るほど、『風と雲と雨』は強烈なインパクトを持っていた。その凄さは、このドラマを直接見た人が明確に意識することができるだろう。
『風と雲と雨』を語るうえで初めに強調できるのは、描かれている歴史のスケールの大きさである。
設定されている時代は朝鮮王朝の末期とも言える1860年代。
国王をしのぐほど強大な権力を持った一族に対抗していく主人公チェ・チョンジュンの存在感がとてつもなく大きい。彼は王朝最高の易術家として次代の国王を名指しできるほど卓越した運命論を持っている。
それゆえチョンジュンはキングメーカーとしての力量を存分に見せるのだが、その迫力満点の主人公をパク・シフが縦横無尽に演じきって、ドラマを歴史巨編としての極みに押し上げた。
まさに、パク・シフの演技力こそが『風と雲と雨』を超一級に昇華させたのである。
それは、共演の俳優も同じだ。
たとえば、ヒロインのコ・ソンヒ。彼女は、人の運命を言い当てることができるという特殊な才能を持ったボンリョンに扮したが、この女性はやがて国王の娘であることが明らかになっていく。
この不思議な身上をコ・ソンヒが情熱的かつ繊細に演じた。彼女がパク・シフと繰り広げた激情型のラブロマンスも本当に見応えがあった。
もう一人はチョン・グァンリョルだ。彼は、末端の冴えない王族ながら息子を国王にしたいというギラギラした野心を持った興宣君(フンソングン)に扮した。この名優は何度もパク・シフと激しい演技対決を繰り広げたが、その迫力は見ていて身震いするほどであった。
確かに、本格的な俳優が競演すれば、ドラマの迫力は飛躍的に増す。そのことを2人の稀有な俳優が存分に見せてくれだ。
このように、俳優が存在感を示せば、ストーリーは自ら奥深く動き出す。実在した人物たちの間に魅力的な主人公たちが入り込み、物語は卓越した独自の世界に構築されていった。
このあたりは、ユン・サンホ監督の創造的な演出が存分に生きている。彼を初めとする制作陣によって、一大叙事詩のようなスケールが大きいストーリーが果敢に作られていった。
実を言うと、ドラマが描く1860年代というのは朝鮮王朝が衰退していく時期であり、韓国の人たちも心情としてあまり見たくない時代設定である。
しかし、先入観は無用だ。『風と雲と雨』が描く世界観は、たとえ困難な歴史の中でも時代に抗って必死に生きた人たちの熱情を感動的に伝えてくれる。それゆえ、『風と雲と雨』は今後の時代劇が示す方向性を高らかに宣言することが可能だった。
どんな分野であれ、新しい潮流を作っていくのは、独自の試みで人間の創造性を無限に広めた先駆者たちだ。そして、時代劇の分野で言えば、まさに『風と雲と雨』がそんな先駆者の役割を果たすことになったのである。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【歴史秘話】『風と雲と雨』の憎き壮洞キム氏はホントウに実在したのか
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