『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』は痛快なラブコメと重厚な歴史ドラマという二つの特徴を持っているが、歴史部分で重要人物となっているのが、大物俳優のチョン・ジュノが演じる光海君(クァンヘグン)である。
このドラマは1615年ごろを描いていて、史実でも1608年に即位した光海君の王位はまだ安定していなかった。なにしろ、対抗勢力が光海君を国王から引きずり降ろそうとして様々な動きを見せていたからだ。そういう事情があって、ドラマの中でも光海君は精神的に不安定で、睡眠不足を何度も訴えていた。
それゆえ、体調が悪いのかと思ったら、『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』では光海君がやたらと王宮から抜け出して、町中にひんぱんに出てくる。むしろ、王宮より市中にいる時間のほうが長いのでは、と錯覚するほどだ。
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確かに、朝鮮王朝では国王が民の暮らしを実際に視察するために「お忍び」で出かけることがあったのだが、『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』の場合は、「お忍び」というレベルをはるかに超えていた。
それでいて、ブランコにも気軽に乗っていたり、怪しい人間を追跡する現場に立ち会ったりしていた。しかも、警護の人がそばにたくさんは付いていない。「あまりに大胆すぎる国王」なのである。
しかも、史実の光海君は暗殺されることを極端に恐れていた。そうであればなおさら、「チョン・ジュノが演じる光海君は出歩きすぎでは」と思ってしまう。
とはいえ、逆に言えば、ドラマの中で光海君が市中にひんぱんに出てきて様々な局面で顔を出すので、ドラマが次々に動き出して、展開がどんどんスピーディーになっている。
そういう意味で、『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』では「動きまわる国王」がドラマを大きく動かしていると言える。
これまでの国王のイメージは、玉座にジッとしていてイライラすることがあまりに多かった。その真逆でドラマを国王自らアクティブに盛り上げているのが、チョン・ジュノが演じる光海君なのであった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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