『イ・サン』というドラマは、ストーリーの奥行きが広くて登場人物のそれぞれの生き方が多面的に表現されている作品だった。
その中で、見る人によって強く感じた部分はどこだろうか。
たとえば、王として生きる孤独と信念。
あるいは、ソンヨンとの愛の行方。
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さらには、政敵との熾烈な戦いと改革への情熱。
こうした要素が『イ・サン』の面白さを際立たせていた。
演じていたイ・ソジンは、様々なテーマ性の中で特に「ソンヨンとの愛」を強く意識していたという。
彼はこう語っていた。
「伝統的な時代劇によくある通俗的な恋愛とは違うものを描きたかったですね」
「たとえば、ソンヨンとの関係においても、現代劇のように胸がドキドキする恋愛をロマンチックに表現したかったと思います」
このように、イ・ソジンは従来の時代劇とは違うテイストで恋愛を演じてみたいと思っていた。そうなると、相手役のハン・ジミンとの相性も大切になってくるだろう。
実際、ソンヨンに扮したハン・ジミンは、清楚な雰囲気を出しながら演じる役を本当に魅力的に表現していた。
イ・ソジンは何よりも「相性がとても良かったです」と振り返っている。
「ハン・ジミンさんはとてもまっすぐで善良な人だと思います。このドラマは、共演者と長い間一緒に作り上げた作品であり、仲間と楽しく撮影をしましたが、ハン・ジミンさんとも呼吸がぴったり合いました」
このように語るイ・ソジンは、ソンヨンにウインクをする場面が印象的だと指摘した。
たしかに、朝鮮王朝時代にウインクはなかったかもしれない。それをあえて演じたことで、イ・ソジンは現代的な恋愛をドラマの中に取り入れてみたかったのだ。
このようにして、『イ・サン』の撮影をやりとげたイ・ソジン。実際にこのドラマは、主人公の正祖(チョンジョ)の人物像を立派に見せることが重要だったとしても、イ・ソジンは現代的なセンスを取り入れたことで、ドラマの多様性を広げたのである。本当に『イ・サン』にはイ・ソジンの創意工夫が随所に生きていた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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