Netflixの話題作『イカゲーム』シーズン3において、新たに登場する参加者120番でトランスジェンダーのヒョンジュを演じたのがパク・ソンフンだ。
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鋭い眼差しと複雑な内面を湛えたそのキャラクターを、彼は一切の誇張なく繊細かつ真摯に演じ切り、物語の深層に新たな緊張感をもたらしている。
ヒョンジュという存在が抱える痛みや孤独、そして人間としての尊厳を、パク・ソンフンは微細な表情と緻密な演技設計によって浮き彫りにし、視聴者の心に強く訴えかける。
そんな彼の俳優としての軌跡を辿れば、その振り幅の広さに驚かされる。初期の代表作『たった一人の私の味方』では、ユン・ジニが演じたチャン・ダヤの兄であり、歯科医のチャン・ゴレを好演。家族を思いやる優しさと、時に揺れ動く心の葛藤を、自然な演技で表現した。
一方で、『サイコパスダイアリー』では180度異なる人格を披露する。演じたのは、テハン証券の理事でサイコパスのソ・イヌだ。
連続殺人鬼というショッキングな側面を持ちながらも、どこか人間的な矛盾を内包するこの難役を、ユーモアと不気味さを織り交ぜて演じることで話題を呼んだ。
さらに、社会現象を巻き起こした復讐劇『ザ・グローリー~輝かしき復讐~』では、過去のいじめ加害者で、ゴルフ場経営者であるチョン・ジェジュンを演じる。
彼の演技は決して一面的ではなく、傲慢さの裏にある不安や脆さまでも滲ませたことで、観る者に強烈な印象を残した。
そして、『涙の女王』でM&Aの専門家ユン・ウンソンを演じ、大財閥を舞台にしたラブコメディに知的で都会的な魅力を添えた。
大学時代の旧友に淡い想いを抱きつつも、自身の立場と感情の狭間で揺れる繊細な男を、控えめながらも説得力ある芝居で体現した。
こうして振り返ると、パク・ソンフンは善良な兄から狂気を孕んだ悪役、知性派のビジネスマンから歴史劇の剣士まで、実に多彩な役を演じ分けてきた。そして今回の『イカゲーム』では、性の境界を超えたヒョンジュというキャラクターに挑むことで、俳優としての新たな領域を切り開いたといえる。
その確かな演技力と、どんな役柄にも深く潜り込む没入力によって、パク・ソンフンは今や韓国ドラマ界において欠かせぬ存在である。『イカゲーム』シーズン3を通して、彼の名がさらに国際的に広がっていくことは間違いない。
文=大地 康
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