チ・ジニは、本当に韓国時代劇で重要な役をたくさん担ってきた。その中で特に印象深いのは、『宮廷女官 チャングムの誓い』と『トンイ』だろう。
『宮廷女官 チャングムの誓い』では、主役のイ・ヨンエが演じたチャングムをいつも温かく見守る武官のミン・ジョンホを演じた。
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ドラマでチャングムは、常に数々の困難に見舞われて挫折を味わうのだが、彼女が本当に困ったときにミン・ジョンホはまるで守護神のように現れてくるのだ。その姿にチャングムがどれほど救われたことだろうか。
いや、チャングムだけではなかった。ドラマを見ていた人も韓服の武官に扮したミン・ジョンホを頼もしく見ていたことだろう。
そういう意味では、チ・ジニが演じた役というのは、『宮廷女官 チャングムの誓い』というドラマにおいても救世主のようなイメージだった。
一方、チ・ジニは『トンイ』では、19代王の粛宗(スクチョン)を演じた。
史実の粛宗は性格がわがままで、女性問題でも数多くのトラブルを起こした国王であったが、チ・ジニが扮した粛宗はトンイに優しく接し、政治的にも正義を重んじる名君だった。
そうした中でチ・ジニは、国王としての粛宗を堂々たる姿で演じたし、それでいて人間味にあふれて優しい面も多かった。
このように、粛宗をチ・ジニは豊かな感性で演じきって、『トンイ』というドラマを大いに盛り上げていた。
この他にもチ・ジニは、現代劇と時代劇の両ジャンルで逆境に強い男をよく演じ、多様な表現力を見せてきた。
これだけ本格派の俳優としてキャリアを持つチ・ジニは、若いときから俳優志望であったと思われがちだが、実はそうではなかった。
チ・ジニは、少年のころから俳優を目指したことは一度もなかった。
彼は大学でもデザインを学び、広告会社に就職した。そして、広告デザイナーとして最前線でバリバリ仕事をしていた。しかし、1997年に韓国で起こった経済危機が彼の運命を変えた。
不況によって彼が務めていた会社も危うくなり、チ・ジニは将来性を考えて次の道を探し始めた。そんなときに芸能関係者にスカウトされた。
本当に人間の運命とはわからないものだ。もしも経済危機がなければ、名優のチ・ジニは誕生していなかったのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
【トンイの真実】粛宗は王として何をしたのか。知られざるその業績とは?
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