韓国のMBCで『トンイ』が全60話で放送されたのは、2010年3月22日から10月12日までだった。
すでにイ・ビョンフン監督は、『ホジュン~宮廷医官の道~』『宮廷女官 チャングムの誓い』『イ・サン』など立て続けに大ヒットを飛ばしており、「韓国時代劇の巨匠」という名声を得ていた。
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そんなイ・ビョンフン監督は、新しい視点を持った韓国時代劇を企画した。
1つは、淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)という粛宗(スクチョン)の側室ながら歴史上で知られていない人物を主人公にすることであり、もう1つはフレッシュな若手女優を主役に起用することだった。
しかし、若手女優の人選は思い通りにいかなかった。辛抱強く女優の適性を見極める中で、白羽の矢を立てたのがハン・ヒョジュだった。
彼女は、2009年に大ヒットした『華麗なる遺産』でヒロインを演じていたが、重厚な演技が必要な時代劇の主役としては実績がまだ足りないとイ・ビョンフン監督は思っていた。
さらには、演技力に関しても現代劇ならともかく、時代劇の主役はまだ難しいのではないかと思われた。それでも最終的にハン・ヒョジュが選ばれたのは、爽やかなキャラクターの魅力だった。
ハン・ヒョジュならば、暗いイメージがあった淑嬪・崔氏をきっと明るく演じきってくれるとイ・ビョンフン監督は考えていた。
まさにハン・ヒョジュは、イ・ビョンフン監督が狙った通りの女優だった。演技力はまだ今一つだったのだが、撮影を重ねるたびに次々と新しい表情を出すようになり、その成長力はすばらしいものがあった。
何よりも撮影が押し迫ってスケジュールが過酷になっても、ハン・ヒョジュは決して弱音を吐かないし、期待以上のものを見せてくれた。
こうして『トンイ』はハン・ヒョジュの頑張りによって、過酷な撮影も乗り越えて想像以上の出来栄えになった。特に後半に入ってからのハン・ヒョジュの演技が見事だった。
チ・ジニが演じた粛宗の側室となった淑嬪・崔氏は様々な事件に巻き込まれるのだが、ハン・ヒョジュは若々しく感性が鋭い演技で周囲の期待に応えていった。
『トンイ』が放送されてから丸10年が経過している。今、改めて見ても『トンイ』でのハン・ヒョジュの演技は本当に光っていた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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