トンイはなぜ正体を隠し明かされると困るのか…賤民はどう管理されていた?

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テレビ東京の韓流プレミアで平日朝に放送されている『トンイ』は、いよいよ佳境を迎えている。

王妃となっている張禧嬪(チャン・ヒビン)は、トンイを追放することに執念を燃やして、トンイの素性を徹底的に暴こうとしている。

トンイにとっては、それが一番困ることなのだ。なぜならば、賤民(チョンミン)の秘密結社である剣契(コムゲ)の頭がトンイの父親だったからだ。

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このことが暴露されるとトンイは犯罪者の娘となり、自分の立場を危うくするのだ。そうした事情に感づいた張禧嬪は、あえてトンイを側室に昇格させようとする。その際には、厳しい戸籍調査があるのでトンイの正体が暴かれると期待していたからだ。

これからは史実の話になるが、朝鮮王朝の賤民というのはそこまで戸籍を詳しく残していたのだろうか。

もともと、朝鮮王朝では厳しい身分制度が採用されていたが、その最下層の身分が賤民だった。そこに含まれるのは奴婢(ぬひ)、奴生(キセン)、芸人などであるが、賤民の大多数は奴婢であった。

奴婢は細かく戸籍を取られていた。それは、その人たちが売買される存在だったからだ。
それゆえ、賤民に関しては専門の部署を設けて戸籍を厳格に管理していた。それが、賤民にとっては大変不自由なものであり、中には逃亡する賤民たちもかなりいた。

たとえば、1592年に朝鮮出兵が起こって、王宮の景福宮(キョンボックン)が燃えてしまったのだが(以後は1865年まで再建されなかった)、実際に景福宮に火を放ったのは豊臣軍ではなくて賤民であった。

この人たちは、戦乱に乗じて賤民の戸籍を燃やしてしまおうと考えたのだ。それくらい、賤民にとっては戸籍によって束縛されることが死活問題であった。

こうした事実を知っておくと、『トンイ』で賤民の戸籍を取り上げる重要性がよくわかるのではないか。

なお、トンイは歴史上は淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)のことだが、彼女の素性も実はよくわかっていない。王宮で水汲みをする賤民であったという説が有力だが、他にも諸説がたくさんある。

おそらく、戸籍を金銭で買い取ったのかもしれない。当時は、出世した人が戸籍を買うということも横行していたからだ。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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