韓国KBS2で放送され、日本ではU-NEXTで配信されているドラマ『ウンスのいい日』は、家庭の温もりを守ろうとしてきた1人の主婦が、残酷な運命に翻弄される姿を描き出した濃密なヒューマン犯罪スリラーである。
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主人公カン・ウンス(演者イ・ヨンエ)は、つつましい日常の幸せを糧に生きてきたが、予想もしない事件の連鎖によって、暗い犯罪の渦へと無情に引きずり込まれていく。その中で物語の緊張感を支え、視聴者の目を離させない役割を担うのがパク・ヨンウである。
彼が演じるチャン・テグは、クァンナム警察署麻薬課のチーム長という骨太な存在感を持つ刑事である。冷徹さと温情を併せ持ち、わずかな表情の変化や細やかな違和感さえ見逃さない観察眼で真実を追い詰める。
彼の捜査は暴力に頼らず、言葉と心理戦によって容疑者の心を揺さぶり、隠された事実を引き出していく。その姿勢は、緊張感に満ちた物語の奥行きを一層際立たせ、観る者に鋭い印象を刻む。
ウンスと交錯しながら麻薬組織の影を追う彼の姿は、作品全体を貫く重厚な軸として存在感を放っている。
パク・ヨンウは長年の俳優生活の中で、実に多彩な役柄を演じ分けてきた。『私たち、他人になれるかな?』ではチョン・ダウルの叔父ハン・ドウンを、『プリースト』では神父ムン・ギソンを演じた。また『済衆院』では外科医ファン・ジョンに扮した。
パク・ヨンウの魅力は、人物の内面を丁寧に解きほぐし、その背景に潜む感情や葛藤を観る者に自然と伝える力にある。
決して派手に叫ぶような演技ではないが、静かな仕草や抑えた声の端々に生きた人間の息遣いを宿らせる。
その積み重ねが、観客に強烈なリアリティと深い余韻をもたらす。『ウンスのいい日』においては、犯罪スリラーならではの張りつめた空気の中で、人間的な揺らぎと正義への執念を鮮烈に描き出し、視聴者を物語の深淵へと誘っている。
彼の存在は、単なるストーリーの推進役にとどまらない。登場人物同士の関係を立体的に浮かび上がらせ、視聴者自身に「自分ならどう選ぶのか」と問いかける力を秘めている。
冷徹さの裏に潜む温かさ、揺るぎない信念の影にある孤独。その二面性を巧みに表現することで、物語はただの犯罪劇を超え、人間の尊厳や弱さを映し出す鏡となるのである。
『ウンスのいい日』におけるパク・ヨンウの演技は、冷徹な刑事像に人間味を吹き込み、作品全体に深みとリアリティを与えている。
長きにわたって積み重ねてきた豊富なキャリアが、その説得力を確かなものにしている。これからも彼が多彩なジャンルで輝きを放ち続けることは間違いなく、その歩みは韓国ドラマ界における確かな財産であるといえるだろう。
文=大地 康
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