今までの韓国時代劇というと、国王を演じる俳優はベテランが多かった。その一方で世子に関しては若いイケメン俳優が多く起用されていた。そういう意味でも、「国王=ベテラン俳優」「世子=イケメン俳優」というのが定番化していた感じがする。
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そういう傾向の中、『暴君のシェフ』で国王イ・ホンを演じたイ・チェヨンには、これまでの時代劇にはないくらい新鮮なイメージがあった。それでいて、演じているのは手が付けられない暴君なのである。そのギャップがとてもいい。
なにしろ、イ・ホンは残虐な性格を持っていて、周囲が怯えるほどに恐ろしい。まさに無敵なのだが、そんなイ・ホンも全く歯が立たないキャラクターが出てきた。それが、現代からタイムスリップしてきたヨン・ジヨン(演者イム・ユナ)なのである。
彼女は動じない性格であり、イ・ホンに対して恐れ多いという感覚がない。当のイ・ホンは怯える人たちを見慣れているが、ジヨンだけはまるで違う存在感を持っている。それがまたとても刺激的だったので、イ・ホンはすっかり魅せられてしまった。
さらに、彼女が作り出す料理は絶品であり、絶対的な味覚を持つイ・ホンを驚愕させるメニューばかりだった。
愉快なのが、イ・ホンがジヨンの料理を食べた瞬間のキラキラ映像。とても華やかで、見ているだけでワクワクさせられる。しかも、イ・ホンがキラキラ映像の中で絵になっているから、よけいに痛快だ。もしかすると、イ・ホンは韓国時代劇に新しいヒーロー像を作り出してくれたのかもしれない。
このイ・ホンを演じたイ・チェミンの才能にも驚かされる。急な主役交代によって突然指名された彼は、準備期間があまりなかったはずなのに、現代劇より難しいとされる時代劇で堂々たる主役をこなしている。
まさに俳優としての瞬発力に感嘆させられる。よほどセンスがいい俳優なのだろう。まだ先がある『暴君のシェフ』だが、最後までイ・チェミンの演技を堪能したい。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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