韓国ドラマ界に新たな挑戦状を叩きつけた作品が『TRY~僕たちは奇跡になる~』である。恋愛や家族を題材にした物語が数多く生まれてきた中で、このドラマが据えたテーマは意外にも“ラグビー”であった。
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韓国においてはまだ一般的な認知度が高いとは言いがたい競技を物語の中心に据え、若者たちが情熱と汗を燃やす姿を鮮烈に描き出している。
舞台となるのは長らく勝利から遠ざかり、廃部寸前の弱小高校ラグビー部。才能も経験も心許ない生徒たちが掲げる目標は、なんと全国大会優勝という途方もない夢である。
無謀にも思える挑戦に突き進む彼らの姿は、観る者に痛快な爽快感を与える一方で、劣等感や不安に揺れる心情は切実であり、深い共感を呼び起こす。練習の苦しみや試合での一瞬一瞬が、彼らにとって奇跡への階段となっていくのだ。
物語の中心には、ユン・ゲサン演じるチュ・ガラムがいる。かつては韓国ラグビー界を代表するスター選手として脚光を浴びながらも、薬物スキャンダルによって全てを失い、転落した過去を背負う男である。
居場所を失った彼が再び立つ舞台は母校のグラウンド。今度は選手ではなく監督として、若者たちの夢と情熱を導いていく。かつての栄光を失った男が再びラグビーと向き合う姿は、ただのスポーツドラマにとどまらず、失われた自己を取り戻そうとする人間再生の物語でもある。
ここで注目すべき人物が、チュ・ガラムの元恋人であり射撃部のコーチを務めるペ・イジである。彼女を演じるのが女優イム・セミだ。
そんなイム・セミといえば、『その冬、風が吹く』でソン・ヘギョ扮する令嬢オ・ヨンの友人ソン・ミラ役を演じ、『帝王の娘スベクヒャン』では百済の25代王・武寧(ムリョン)王の妃であるウネ王后に扮した。
また、『女神降臨』ではムン・ガヨン演じるイム・ジュギョンの姉イム・ヒギョンを演じ、『旋風』では、ソル・ギョング演じる首相パク・ドンホの秘書ソ・ジョンヨンに扮していた。
イム・セミはまた、『あいつは黒炎竜』においても重要な役を担っている。居酒屋スルロの店主ソ・ハジンとして登場した。
『TRY~僕たちは奇跡になる~』でのペ・イジ役もまた、主人公との過去と現在をつなぐ鍵を握る存在であり、イム・セミならではの繊細で確かな演技が物語を一層引き締める。ラグビーという異色の題材に挑む本作と、着実にキャリアを積み重ねてきたイム・セミの存在は、韓国ドラマの新たな可能性を示すものといえるだろう。
なお、『TRY~僕たちは奇跡になる~』はNetflixで視聴することができる。
◆『TRY~僕たちは奇跡になる~』概要
放送局:SBS(2025年)
出演者(役名):ユン・ゲサン(チュ・ガラム)、キム・ヨハン(ユン・ソンジュン)、キム・イジュン(オ・ヨングァン)、イム・セミ(ペ・イジ)、パク・ジョンヨン(ソ・ウジン)、キル・ヘヨン(カン・ジョンヒョ)
監督:チャン・ヨンソク (『復讐代行人2~模範タクシー~』など)
脚本:イム・ジナ
配信情報:Netflixにて独占配信中
文=大地 康
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