ハングルを創製したことで「最高の名君」と称される4代王・世宗（セジョン）。彼の長男が5代王・文宗（ムンジョン）であり、孫が6代王の端宗（タンジョン）だ。学識にすぐれていた国王の血を受け継いで、端宗も善政を行うのに十分な素養を持っていた。
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しかし、彼は1452年に国王になったが、3年後の1455年に叔父の首陽（スヤン／世宗の次男で文宗の弟）に王位を強奪されてしまった。
そもそも、端宗は生まれたときから哀しみに包まれていた。彼を産んだ顕徳（ヒョンドク）王后は産後すぐに亡くなってしまい、端宗は母の愛を知らずに育った。11歳のときに父の文宗が亡くなり11歳で即位した。
こういうときに朝鮮王朝では生母が摂政をして国王が成人するのを待つのだが、端宗の場合は生母がいなかったので後ろ楯を得られなかった。それが叔父の首陽につけこまれる根拠となってしまった。
強欲の首陽が7代王・世祖（セジョ）になると、高官たちによって端宗の復位騒動が起きた。それが有名な「死六臣」の事件だが、それを未然に防いだ世祖は再び復位騒動が起きないように、端宗を僻地に流罪としたあげくに死罪を命じた。1457年のことで、端宗はまだ16歳だった。
野史（正式な歴史書ではなく民間に伝承している歴史書）によると、世祖の命令で毒薬を持参した使者は、それを渡すことができず、ただ端宗の前で身を伏せるばかりだったという。それを見た端宗が覚悟して自分の首に緒を結び、窓の外にいた者にそれを引っ張れと命じた。
このような端宗の堂々たる最期は後世の語り草になっているが、その遺体は放置された、と野史は伝えている。しかし、心ある者が処罰されるのを承知で丁重にとむらったという。
本当に血も涙もない非道な世祖から悲惨な仕打ちを受けた端宗の話は、同情なくしては語れない「理不尽な歴史」の最たるものだ。せめてもの救いは、後世になって「悲劇の端宗」の名誉が回復されたことだ。
文＝康 熙奉（カン・ヒボン）
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