朝鮮王朝の歴史に残る悪女は、ほとんどが悲惨な最期を遂げている。その一方で、王族女性として最悪の政治を行なった人たちは幸せな晩年を過ごしている。あまりにも落差があるが、昔も今は「極悪な奴ほどよく眠る」というのが俗な世の中なのかもしれない。
【関連】「あまりに賢すぎた悪女」キム・ゲシ(金介屎)が犯した罪と悪だくみとは…
そんな中で、歴史上で斬首された悪女のことが気になってきた。いくら悪事を重ねたとはいえ、首まではねられるのはよほどのことだ。調べてみると、朝鮮王朝の歴史で斬首された悪女として有名なのは2人だ。
最初は、燕山君(ヨンサングン)の側室だった張緑水(チャン・ノクス)である。
彼女は最下層の身分の出身で、子供がいたのに夫を捨てて妓生(キセン)になった。宴席では歌謡が上手で、くちびるを動かさずに美声を披露したそうだ。やがて燕山君に気に入られて側室になった。途端に、彼女は王宮の倉庫から財宝を持ち出して私腹をこやした。
結局、燕山君と張緑水の浪費は王朝を破産状態にするほどだった。それなのに、燕山君は民衆に重税を課したのでとても恨まれた。
1506年に燕山君はクーデターで王宮を追われ、彼は流罪先で2カ月後に絶命した。張緑水も市中で斬首となり、遺体が放置された。多くの人が遺体に石を投げたので、たちまち石塚ができたという。それほど民衆から恨まれたのだ。
2人目は、光海君(クァンヘグン)を支えた女官の金介屎(キム・ゲシ)である。
彼女は貧しい家の出身だったが、頭が抜群に良かった。女官になってから頭角を現し、高官たちを操って政治を動かした。特に光海君の脅威になっていた兄の臨海君(イメグン)と弟の永昌大君(ヨンチャンデグン)を殺害している。このように、金介屎は目的を遂行するためなら手段を選ばないという恐ろしい悪女だった。
しかし、あまりにも周囲から恨みを買いすぎた。1623年に光海君がクーデターで廃位になると、金介屎もいきなり斬首されてしまった。
頭の良さをいい方向に使っていたら、みんなから愛されたはずなのに……。最期は斬首、というのは、金介屎の人生にとって耐えられない屈辱だ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
前へ
次へ