朝鮮王朝の側室は、組織の分類からすると、「女官」である。王族を世話するために働いている女官と一緒である。
ただし、女官の中でもエリート中のエリートである。そのあたりを説明しよう。
そもそも、宮中で働く女官の中で品階がある人(立場が上位の人)のことを「内命婦」(ネミョンブ)と言う。
朝鮮王朝では常に500人以上の女官が王宮の中で奉職していたと言われている(最盛期には1000人以上がいたとも称されている)。
女官の品階は、「一品」から「九品」までの9段階に分けられていて、それぞれに「正」と「従」がある。意味からもわかるように、「正」のほうが序列は上だった。こうして女官の品階のランクは18段階になっていた。
この中で、上位にあたる「正一品」から「従四品」までの8段階は、王が抱えている側室に与えられるものだった。
そして、王に対する貢献度によって、与えられる品階が変わってきた。
たとえば、側室が王子を産めば「正一品」に昇格することが多かったし、たとえ王子を産まなくても王に寵愛される度合いによって品階が上下した。
そして、それぞれの品階には正式名称がついている。それは以下のとおりだ。
正1位 嬪(ビン)
従1位 貴人(クィイン)
正2位 昭儀(ソウィ)
従2位 淑儀(スギ)
正3位 昭容(ソヨン)
従3位 淑容(スギョン)
正4位 昭媛(ソウォン)
従4位 淑媛(スグォン)
王は多いときは10人くらいの側室を抱えていたが、側室は最初淑媛として採用され、王への貢献度に応じて昇格していった。しかし、淑媛のまま、まったく昇格できない側室も多かったという。
そうした中で正1位の「嬪」になれるのは、よほどのことなのである。悪女として有名な張禧嬪(チャン・ヒビン)や、『トンイ』の主人公のモデルになった淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)は名前に「嬪」が付いているように大出世を果たしている。やはり、王の息子を産んでいることが一番大きかった。それでこそ、最高峰の女官になれたのである。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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