韓流プレミアで放送中の韓国時代劇『トンイ』。ドラマの終盤で、張禧嬪(チャン・ヒビン)は仁顕王后(イニョンワンフ)を呪詛していたことで死罪となるが、それに対して高官たちが大反対している。
前編では高官たちが粛宗に反論したところまで紹介した。後半は粛宗の言葉から始まる。いったい高官たちの言葉に粛宗は何と言ったのだろうか。
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粛宗はこう反論した。
「国家が不幸に陥り、宮中で災難が発生した。世の中、このように邪悪なことがあるものか。まさに、前代未聞のことだ。
だが、大臣たちが世子のためを思って言っていることを余が知らないわけがなかろう。余がこんなことをする理由はほかでもない。国家のためであり、世子のためなのだ。あの者(張禧嬪)を生かしておけば、余が生きている今でも邪悪なことが起きているのに、あとでどれほどのわざわいとなることか。
余が切実に思い、嘆く理由がそこにある。もし今決断できなかったら、臣下たちもかならず後悔するはずだ。かならず国家が手に負えない事態に陥るだろう。なんて恐ろしいことか」
これに対し、ある高官が嗚咽(おえつ)しながら言った。
「今日の臣下たちはみな世子様のために死ぬことを恐れない連中なのです。世子様を守ろうとする意志は尽きることがありません。殿下はなぜ、そのことについて考えてくださらないのですか」
まるで粛宗の思慮が足りない、と言わんばかりの発言である。
粛宗はできるだけ感情を抑えて言った。
「君たちが、世子のためを思っていることを余が知らないわけではない。ただ、今後の国家のことを心配しているのだ。世子は善良で孝行の心が満ちている。ただ、その母親は悪徳の人物なので、生かしておくとわざわいがますます手に負えなくなってしまう。そのことが恐ろしいだけだ」
ここまで粛宗が言っても、その高官は食い下がった。
「聖上(粛宗のこと)が固執しているのは義理であり、臣下の者たちが申しているのは人情です。私どもは、公私と恩義の違いがわかっておりますし、法を守ることと恩を大事にすることが両立できないことを知らないわけではありません。もちろん、殿下の深き心配も知っております。とはいえ、後日の心配は、まだ起こっていないことに対する心配であり、今日のお願いは目前のことに対する心配なのです」
話は完全に平行線となった。この後も臣下たちからの請願が相次いだが、最後は王に究極の決定権がある。それが、王を頂点とする中央集権国家というものなのだ。
粛宗は敢然と言い放った。
「死罪以外に他の方法はない」
粛宗は最後まで自分の意志を曲げなかった。こうして張禧嬪の死罪が確定し、彼女は1701年10月に毒を呑んで絶命した。
結局、粛宗は高官たちの言葉に耳を貸さずに張禧嬪を死罪にしてしまった。もし、このまま張禧嬪が死罪にならなかったら、その後の朝鮮王朝はいったいどうなっていたのだろうか。
構成=大地 康
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