『夜警日誌』でユンホが演じたムソクは、物語の終盤で「鬼神」を見る能力を持つようになる。現代において鬼神の存在は現実感のない話だが、古来、東洋では「鬼神」を陰陽説で解説する傾向が強かった。
朝鮮王朝時代後期の実学者である李瀷(イ・イク)は著述『星湖僿説』において、鬼は「陰の霊」、神は「陽の霊」と定義した。
そして生物の本質は陰陽2つの「気」であり、その2つの気が生物から離れることで、「魂」「精霊」「神」、または「鬼神」になると考えていた。
そんな鬼神は、人間と同じように自我を持つ存在だという。
朝鮮王朝時代の人々は、鬼神は人間を惑わすことに興味があり、奇怪な出来事を起こして人間を欺くことが多いと考えていたようだ。
霊的な問題を解決する巫堂(ムダン/朝鮮半島の巫女)は、儀式の際に「神おろし」をして、災いの源となる鬼神を退けたという。
韓国における鬼神への畏怖は根強く、鬼神の侵入を防ぐための「洞祭(トンジェ)」という祭事は、最近まで各村で行われていたそうだ。
ちなみに李瀷は第19代王・粛宗(スクチョン)時代の党派争いによって没落した南人派(ナミンパ)の家庭に生まれ、官職には見向きもせずに、生涯学問に打ち込んだ。
天文、地理、数学に明るく、職業に貴賎はないので両班(ヤンバン)も産業に従事すべきと主張して関心を集めた。死後、判事(パンサ)の官職が与えられている人物だ。
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