“ミールキット”から“マカロン信仰”まで。忙しさの中にも食の喜びを追求する韓国【韓ドラから見える食のトレンド②】

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近年の韓国ドラマでは、「食」が単なる演出や背景ではなく、社会の変化や人々の価値観を映し出す鏡として、より立体的に描かれている。そんな食のシーンを通して、いまの韓国の暮らしと感性をのぞいてみた。

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●「調理は仕上げだけ」・・・“ペダル”より罪悪感の少ない“ミールキット”

共働き世帯や一人暮らしが増えるなか、“ミールキット”を利用する家庭が増えている。下ごしらえ済みの食材を、炒めたり煮たりするだけで完成する手軽さが魅力だ。ペダルよりも罪悪感がなく、特に忙しいワーキングマザーの“時短ごはん”として急速に普及した。

2018年に約374億ウォン規模だったミールキット市場は、2023年には約4,130億ウォンへと10倍以上に成長し、2025年には7000億ウォン(2025年10月時点)規模に達すると予測されている。さらに近年は、有名シェフや高級ホテルなどとコラボしたプレミアム商品も人気で、「忙しい日常の中でも楽しめる新しい食文化」として定着している。

(画像=namuwiki)

『社内お見合い』では、キム・セジョンが演じるヒロインが、食品メーカーでミールキットの開発に携わる女性として登場。企画や試食のシーンを通じて、現代の食の産業化と競争社会のリアリティを垣間見ることができる。また、長年思いを寄せていたシェフとコラボした新商品の試食会や新企画のプレゼンなどからも、多様化するミールキット市場の広がりが見て取れる。

また、日本でもリメイクされたパク・ミニョン主演の『私の夫と結婚して』(2024年/全16話)でも、ミールキットが物語の重要な要素となっている。ヒロインのジウォン(演者パク・ミニョン)が担当するミールキットの企画で、発売直前に有名シェフたちが次々と契約をキャンセルするトラブルが発生。このエピソードからも、ミールキットが韓国で注目を集める食ビジネスであることがうかがえる。

●“単なるスイーツ”を超えた“マカロン信仰”

『暴君のシェフ』(2025年/全12話)では、食が権力や欲望の象徴として描かれているが、朝鮮王朝時代にタイムスリップした天才シェフ・ジヨン(演者ユナ)が、朝鮮の王イ・ホンと明の使臣団に、黒ゴマなどで作った朝鮮式マカロンを献上し、絶賛を受けるシーンは特に印象的だ。ジヨンは「政治の場でも、雰囲気を和らげるには甘いものが一番」と語り、マカロンを「甘くて幸せな気分になれる西洋のお菓子」として披露。時代や文化を越えて、人の心をほぐす存在として紹介されている。

(画像=tvN)

韓国でマカロンがブームになったのは2010年代半ば。SNSの拡大とともに、かわいい色合いの映えるビジュアル、小さな贅沢感が若者に支持され、その後、韓国独自に進化した“トゥンカロン(ぽっちゃりマカロン)”なるものも現れた。10年以上経った今でも、特に若い女性にとって“マカロン信仰”と言えるほど、手にするだけで「おしゃれ」「幸福感」「自己演出」を体現できる根強いライフスタイル・シンボルとなっている。

時短と便利さを追い求めながらも、見た目や味に“ときめき”を求める韓国・食のトレンド――ミールキットもマカロンも、忙しい日常の中で、自分らしさを取り戻すための小さなご褒美なのかもしれない。

(文=田名部 知子)

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