韓国はもちろん、日本でも長く愛されている韓国時代劇ドラマ『トンイ』。
賎民出身のトンイは、持ち前の正義感で王室の中枢まで上り、ついには時の王・粛宗の絶対的信頼を得るまでに成長する。
復讐心と愛が複雑に絡み合う韓国時代劇お得意の人間ドラマだった『トンイ』は、明るく健気でまっすぐなハン・ヒョジュの存在なくして成功しなかっただろう。
そこで気になるのがハン・ヒョジュの『トンイ』の思い出だ。過去のインタビューでの彼女のやり取りを紹介しよう。
―ハン・ヒョジュさんが『トンイ』のなかで、一番忘れられない場面、セリフはなんでしょう?
「すべての場面が記憶にありますが、すぐに思い浮かぶのは、チャン・ヒビンが最期を迎えるときでしょうか。トンイのチマ(スカート)を掴んで自分の息子をお願いと涙ながらに頼むシーンが印象深いです。自分のロールモデルであったヒビンの最後を看取りながら、トンイが感じたであろう複雑な心情が忘れられません」
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―たしかにあのシーンは衝撃的でした。明るくて、ポジティブなトンイというキャラクターにとっては、難しい場面ではなかったですか?
「そうですね。どう感情を表現しようかと悩みました。ヒビンは自分にとっては恩人であり、ライバルであり、そして同じ母としての立場を知る女性でもありました。
そう言った意味で、あのシーンが自分にとって一番印象的なんだと思います。複雑な気持ちの正体はやはり、悲しみだったと思いますね」
―それでは、一番好きなシーンというはどこでしょうか?
「それもいろいろあって選びづらいですね(笑)。ただ、ひとつ挙げるならば、最終回に自分の住まいの塀を壊して、民に解放する場面でしょうか。
物語の途中でも、民に施す食料があまりに悲惨なためそれを嘆いて行動する彼女の姿が出てくるのですが、そのような場面がトンイの一番愛される面ではないかなと思っています。
実際に、私はそんなトンイの一面が大好きです。トンイの姿の奥にあるのは、優しさではないかと思うんです。
また、裏を返すと強さでもあると思うんですよ。人って自分の心が弱いと人に優しく出来ないじゃないですか? だから、トンイの優しさ=強さがうらやましくもありましたし、自分もそうなりたいなと思っています」
―『トンイ』は正直で聡明、愛を守ることを知る女性でした。実際のハン・ヒョジュさんはどうでしょうか?共通点と相違点を教えてください。
「私は、トンイに比べて足りない部分が多い人間です。わたしもやはり、トンイから多くのことを学んで、多くのことを顧みるようになりました。
ドラマの役を通して学ぶことというのは本当に多いんですよ。役者や俳優が役を通じて成長できるというのは、こういうことを言うんだなと改めて感じています」
文=慎 武宏
*このインタビュー原稿は2012年6月に行なわれたものを、大幅に加筆・修正したものです。
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