なぜ『宮廷女官チャングムの誓い』は今でも長く愛されるのか

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日本における韓流時代劇ブームの火付け役となった『宮廷女官チャングムの誓い』。

16世紀の朝鮮王朝時代に実在した医女・チャングムが、宮廷内の権力争いに翻弄されながらも、最後には女性初の王の主治医になる全54話のサクセスストーリーは、2003年に韓国で放送されると平均視聴率40%を記録。日本でも、2006年のNHK地上波での放映時は土曜深夜にも関わらず、16%の高視聴率をマークした。

さらに中国、台湾などアジアのみならずヨーロッパやアフリカなど100カ国以上にも輸出され、まさに世界的な人気作品となっている。その人気は現在も衰えを知らず、日本では今でもドラマが再放送されるほどだ。

『宮廷女官チャングムの誓い』(写真=2003-2004 MBC)
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日本の『チャングム』人気を語る際、特筆すべきことは韓流ファン層を一気に広げたことだ。『チャングム』以前は韓流ファンと言えば『冬のソナタ』などのラブストーリーに酔いしれる女性たちが多かったが、『チャングム』は男性層からも支持を得たのである。

豪華キャストと主演イ・ヨンエの存在感

なぜ、それほどに『チャングム』が人気を集めたのはなぜなのだろうか。
 
真っ先に挙げられるのは、豪華なキャスティングだ。チ・ジニやイム・ホはもちろん、イム・ヒョンシクなど脇役も超一流の役者ぞろい。中でもチャングム役にイ・ヨンエを抜擢したことは大きい。

【写真】『チャングム』主演イ・ヨンエのその後と現在。あの人は今…

放送当時、イ・ヨンエは韓国映画界の主演女優別平均観客動員数で1位に君臨する正真正銘のトップ女優。そんな人気に加え、彼女がチャングムのキャラクターにぴったりハマったからこそヒットしたと言えるだろう。

『チャングム』の脚本を書いたキム・ヨンヒョンも語っている。

「イ・ヨンエさんは知的な冷静さの中に、芸術的な情熱が溢れた役者。聡明で情熱的なチャングムのキャラクターを120%消化できたのは、彼女の内面がチャングムに似ていたから」

もっとも、キャスティングが良くても物語が平凡ではヒットは望めない。その点、『チャングム』はストーリーも魅力的だった。

一番の特長はとにかく飽きさせないこと。料理対決の直後に離島に追放されたりと、次々と難問が現れる展開にのめり込んでしまうのだ。

イ・ビョンフン監督の想いと万人にウケる演出術

そんなハラハラする展開ではあったが、「女官編」「医女編」と構成がきっちり分けられており、あらすじさえ読めばどの時代から見ても楽しめたのも魅力だった。

そして、その時代ごとに逆境を乗り越えていくチャングムの姿に勇気をもらう人々も多かった。

イ・ビョンフン監督は「韓国は1997年の“IMF経済危機”後、どことなく活気を失っていました。チャングムの姿を見て元気になってほしかった」と語っているが、不景気が叫ばれて久しい日本でヒットしたのも当然だったかもしれない。善と悪の対立がはっきりと描かれたことも、『水戸黄門』などに慣れ親しんだ日本人が熱中した理由だろう。

しかも、扱う素材は料理や医術と世界共通の関心事。歴史を知らずとも語りと字幕で時代背景を理解できるように作られたこともあり、どの国の人が見ても共感できた。

そんな共通項に対し、韓服や礼儀など韓国固有の文化が美しく描かれたことに惹かれたというファンも多い。

演出も作り込まれていた。アクションやサスペンスなどの要素が織り込まれたため、視聴者を限定しなかったし、調理シーンなど数多くの映像的な見せ場はもちろん、耳に残る主題歌『オナラ』なども直感的な楽しさを与えた。

こうして見ると、『チャングム』がいかに考え抜かれた作品かわかるだろう。空前の大ヒットは必然だったのだ。

構成=韓ドラ時代劇.com編集部

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