Netflixで全世界同時配信している『イカゲーム』シーズン3で再び主人公ソン・ギフンを演じたイ・ジョンジェは、極限状況下での人間の葛藤を繊細に、そして迫真の演技で描き出している。
前作で命を賭けたゲームを制し、生還を果たしたギフンは、3年後、再び自らの意思でゲームの渦中に飛び込む。今度はただの生存者ではなく、システムそのものに立ち向かう存在だ。
イ・ジョンジェが作り上げるギフン像は、単なる被害者でも英雄でもなく、人間の弱さと強さの両面を併せ持った存在として描かれている。
そんなイ・ジョンジェは、『イカゲーム』以外でも多彩な役柄をこなしてきた実力派俳優である。韓国MBCドラマ『トリプル』では、全く異なるジャンルの作品で新たな一面を見せた。
本作で彼が演じたのは、広告代理店に勤めるシン・ファルだ。彼は仕事と家族、そして恋愛の狭間で揺れ動く大人の男性を演じ、物語に落ち着いたリアリティを与えた。
義理の妹であるフィギュアスケーターのイ・ハル(演者ミン・ヒョリン)や、友人で同僚のチョ・ヘユン(演者イ・ソンギュン)、チャン・ヒョンテ(演者ユン・ゲサン)との関係性の中で、イ・ジョンジェは決して派手ではないが確かな存在感を放ち、群像劇としてのドラマを支えていた。
さらに、韓国JTBCドラマ『補佐官』で政界の裏側に生きる参謀チャン・テジュンを演じ、再び違う魅力を見せた。
元警察官という異色の経歴を持つテジュンは、正義と権力の狭間で揺れる現実主義者。テジュンの恋人である大韓党初当選国会議員カン・ソニョン(演者シン・ミナ)や、ソン・ヒソプ議員室インターンのハン・ドギョン(演者キム・ドンジュン)、ライバルであるイ・ソンミン(演者チョン・ジニョン)らと対峙しながら、複雑な感情をぶつけ合う緊迫感あふれる演技は、イ・ジョンジェの表現力の広さと深さを証明するものだった。
1人の俳優が、時には絶望に満ちたゲームの生還者として、またある時は社会の表と裏に立つ男として、それぞれの世界に説得力を与えている。
イ・ジョンジェの演技は、ジャンルを問わず人間の内面を掘り下げ、視聴者に深い余韻を残す。その存在感こそが、彼を一線の俳優として確立している所以だろう。
文=大地 康
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