パク・ボヨンが、繊細かつ密度の高い表現力でドラマを圧倒している。彼女は、tvNドラマ『未知のソウル』で、日々を必死に耐えながら生きるユ・ミジと、自分を消してシステムの中に溶け込んでいくユ・ミレの2役を演じている。
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ただの1人2役にとどまらず、それぞれの人生の手触りの違いを巧みに織り上げ、深い演技力を見せている。
最新の放送では、ロサ食堂の前で閉ざされる扉を見つめるミジの姿が描かれた。自らの手で掴もうとしていたチャンスが目の前で遠ざかる中、パク・ボヨンは深い眼差しと微細な表情の変化だけで、キャラクターの内面を余すことなく伝えた。
感情を抑えながらも止まった視線に込められた心の波動は、むしろ沈黙の中でいっそう大きな余韻を残した。
続いて、イ・ホス(演者パク・ジニョン)が退職後に無気力になって揺らぐ様子を見せると、ミジは「ただ会社を1つ辞めただけ。大丈夫」と静かに言葉をかけた。
この場面でパク・ボヨンは、言葉より行動で思いを伝えるミジ特有のやり方に自分なりの温度を加え、孤独と傷を知る者だけが持ち得る無言の優しさを体現した。
特に、公園のベンチでホスに編み物を教えるシーンでは、余計な誇張を排しながらも、閉ざされた心にゆっくりと寄り添っていく温かな空気感を描き出していた。
一方、常に娘と社員という役割に忠実だったミレは、仕事と家族の間でバランスを失い、自らの欲望と選択に直面していく。
パク・ボヨンはその内面の変化をきわめて抑制された演技で表現し、キャラクターが慣れ親しんだ枠組みを抜け出し、徐々に本来の自分の名前を取り戻していく過程を説得力をもって積み上げていった。
他人の期待の中で息をひそめて生きてきたミレが、静かに亀裂を生み始める流れの中で、パク・ボヨンの目線や語り口は、ささやかな決断すらも物語を動かす原動力となった。
パク・ボヨンは、物語の中心で極端に対照的なミジとミレという2人のキャラクターを、異なる温度と質感で説得力をもって演じ分け、全体のストーリーを安定して牽引している。
わずかな視線の交差や、扉の前でのためらいといった細かな動作までもが登場人物の心理の流れと有機的に結びつき、彼女が感情の名手と呼ばれる所以を再び証明している。さらにパク・ボヨンは、崩れ落ちた末に再び立ち上がるキャラクターの軌跡を丁寧に描き出している。
閉ざされた扉の前で立ち尽くす姉妹の時間を代わりに生きる彼女の表情には、空白の時間と揺れる感情が刻まれており、記憶とトラウマ、希望と恐れまでもが体現されたその演技は、観る者の心の奥深くに触れるものであった。
このようにパク・ボヨンは、ミジとミレという対照的なキャラクターを通じて全く異なる人生の模様を細やかに織り上げ、視聴者の没入感を導くコンパスの役割を果たしている。
刺激的な演出に頼ることなく、深みを与える彼女の演技は、ドラマ全体の情感をしっかりと支え、物語の核を成している。
『未知のソウル』を通じて、また1つ代表作を築きつつあるパク・ボヨン。笑顔の裏に隠された孤独や、崩れても揺るがぬ強さを描き出す彼女の演技は、毎回視聴者の心を打ち、今後の展開への期待を一層高めている。
なお、パク・ボヨン出演の『未知のソウル』は、毎週土・日曜の夜9時20分よりtvNにて放送中。さらに、Netflixでも視聴することができる。
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