テレビ東京の韓流プレミアで放送されてきた『太宗 イ・バンウォン~龍の国~』。このドラマの全編にわたって展開されたのは、チュ・サンウクが演じた李芳遠(イ・バンウォン)の「異様なほどの権力への執着」だ。その実現のために、残虐なことを繰り返したのが李芳遠という男の実態だった。
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最初、師匠とも慕った鄭夢周(チョン・モンジュ)を殺害している。彼が高麗王朝の存続にとことんこだわったからだ。
こうして李芳遠の多くの功績があって朝鮮王朝が建国されると、彼は初代王・李成桂(イ・ソンゲ)の五男でありながら、国王になるという野心を隠さず、ついに異母弟で世子になっていた李芳碩(イ・バンソク)を殺して最大の実力者になった。
その際には、李成桂が一番頼りにしていた鄭道伝(チョン・ドジョン)を殺している。このように、李芳遠は王朝に絶対に必要な重要人物ですら自分の権力奪取の邪魔となれば容赦なく残酷な方法で排除していた。そのうえで、1400年に満を持して3代王となった。
彼は朝鮮王朝に27人いた国王の中で、一番の揺るぎない大王であった。王朝が518年も続いたのも、李芳遠が統治の基盤を完全に整備したことが大きかった。そんな彼の協力者が妻の閔氏(ミンシ)であった。
彼女は、権力闘争のときに政敵の急襲をいち早く知らせて夫を救った。それほど頼りになる妻であったのに、李芳遠が国王になってから冷遇されて、実家も滅ぼされてしまった。当然ながら閔氏は夫を許さなかった。それゆえ、李芳遠と閔氏の夫婦仲はあからさまに冷え切ってしまった。
さらに、李芳遠は1418年に王位を三男に譲って上王となったが、軍事権だけは絶対に手放さず、国王の妻の実家であつた沈氏(シムシ)一族も滅ぼしてしまった。
このように、権力を守るために非道な行いを繰り返した李芳遠。彼は太宗(テジョン)として世を去る1422年まで朝鮮王朝に君臨したが、その正体は権力にとりつかれた「無慈悲な怪物」であった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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