子役で活躍した後に大人の俳優として大成功を果たしたチャン・グンソク。数多くの主演作の中で忘れられないのが『テバク~運命の瞬間(とき)~』である。
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主役のチャン・グンソクの他に、ヨ・ジング、チェ・ミンス、チョン・グァンリョルという豪華な顔ぶれが揃い、本当に面白いドラマだった。特に感心したのは、物語の時代設定が巧みだったことだ。
舞台となっていた時期は、朝鮮王朝の19代王・粛宗(スクチョン)から21代王・英祖(ヨンジョ)に至る時代だ。その中で粛宗の統治時代で有名なのは、「朝鮮王朝随一の悪女」と言われる張禧嬪(チャン・ヒビン)と、ドラマ『トンイ』の主人公になった淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)である。
そして、チャン・グンソクが『テバク~運命の瞬間(とき)~』で扮したテギルは、粛宗と淑嬪・崔氏との間に生まれた子供という設定だった。その子供を粛宗が一度は捨ててしまう、というエピソードが『テバク~運命の瞬間(とき)~』の重要部分になっていた。そして、捨て子が無事に育てられてテギルという快男児に成長していくのだ。
史実で粛宗と淑嬪・崔氏の子供といえば、1694年に生まれて後に英祖(ヨンジョ)になるヨニングンがよく知られているが、実は淑嬪・崔氏は前年に粛宗の子供として永寿君(ヨンスグン)を産んでいた。ただし、この子は数カ月で亡くなってしまう。
しかし、永寿君は早世したのではなく他人に育てられて生きていた、という物語にしたのが『テバク~運命の瞬間(とき)~』のユニークなところであり、その人物をテギルとして生き返らせてチャン・グンソクが堂々と演じていた。そのテギルはやがてイカサマ師になって国王となった英祖と国家を賭けた大勝負を争うことになる。
そういう意味でも、『テバク~運命の瞬間(とき)~』はとてもスケールが大きい時代劇だった。その中でチャン・グンソクは、自由奔放に生きる快男児を思う存分に疾走していた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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