韓流プレミアで放送されている話題の時代劇『赤い袖先』を演出したチョン・ジイン監督は、本当に才能がある女性だ。その手腕について強調したいのは、色彩と陰陽を巧みに使った映像美を見事に創出できる演出家だということだ。
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たとえば、『赤い袖先』の前半で、イ・ジュノが演じるイ・サンとイ・セヨンが扮するソン・ドギムが感情の距離を縮めるとき、繊細な色彩と照明が実に巧みに配置されていて名シーンになっていた。それによって、見る人の心には深い情感が湧き上がったことだろう。まさに、監督を中心に撮影スタッフの英知が凝結された成果であるに違いない。
実際、『赤い袖先』は格調高い時代劇に仕上がっている。大事なストーリーに目を移すと、「国王になる運命の王族と自立した宮女の究極的な愛」というテーマ性に強く惹かれる。
具体的に言えば、ヒロインであるソン・ドギムの生き方にしっかり焦点が当たっていて、宮女の人生を多面的に扱うというドラマの主旨も非常に心強かった。
何よりも、ソン・ドギムはイ・サンが望む承恩(国王と一夜を共にすること)を二度も拒み、自身の意志を貫くために死をも覚悟したのであった。そういう境遇に扮したイ・セヨンの演技には、インパクトを持った強い意志が滲み出ており、その内面が伝わってくる瞬間こそが『赤い袖先』の大きな見どころだった。
これまでの時代劇では、ヒロインが社会的に弱い立場に過度に置かれていた。朝鮮王朝時代の男女差別の風潮を考慮すれば、これはやむを得なかったのだが、現代から見ると、女性の生き方があまりにも時代により制約されていたという感が否めなかった。
しかしながら、制約が多いからといってもそれを乗り越えて力強く生きる女性も確実に存在した。『赤い袖先』のソン・ドギムは、そのような役割を先駆的に果たしたのだ。監督であるチョン・ジインは、その鋭い感性を活かし、時代劇に新たな風を吹き込んだ。その成果として『赤い袖先』は傑作という高い評価を受けたのである。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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