朝鮮王朝の国王を演じるとなれば、男優も平常心ではいられない。やはり「威厳を持った堂々たる姿」を存分に見せなければならないからだ。そういう意味で、ぜひヒョンビンに国王を演じてほしいと思った人も多かっただろうが、その願いを叶えてくれたのが映画『王の涙－イ・サンの決断－』であった。
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忘れてならないのは、この作品がヒョンビンにとって兵役を終えてからの復帰作であったということだ。さらには、時代劇への初挑戦だった。そのため、彼は通常以上のプレッシャーを抱えて演技に取り組むこととなった。
ヒョンビンが演じたのは、朝鮮王朝の22代目のイ・サンである。この名君はこれまでも多くの作品で取り上げられてきた。
ヒョンビンはこの歴史的な大人物にどのように挑戦したのか。そのことがとても気になるが、彼は長いブランクを経て演じる役には強烈な愛着があったという。そういう気持ちの中で朝鮮王朝を代表する名君にチャレンジしたいと思ったのだった。
歴史的に言うと、イ・サンは政敵が多く、絶えず忍耐を必要とする君主であった。ヒョンビンのセルフコントロールが効いた演技は、イ・サンの内面の世界を冷静に描き出していた。
なによりも、ヒョンビンはイ・サンを正確に理解していた。それは、朝鮮王朝の正史である『朝鮮王朝実録』に掲載されたイ・サンについての記述を詳細に読み込んだ結果である。
すでにイ・サンに関する作品は多く作られており、自身が演じることになれば、他の作品を参照したくなるのが当然である。それなのに、ヒョンビンは他の俳優の演技を見ないで自分なりの解釈を重視した。
実際、ヒョンビンは「他の作品を視聴することを避けて、今回の作品はこれまでにない緊張感あふれるイ・サンを表現したいと思いました」と語っている。これこそが彼の率直な意欲だったことだろう。
こうして、ヒョンビンは『王の涙－イ・サンの決断－』によって歴史的な名君に新たな光を当てた。それは、まばゆいばかりの名演技が伴った輝きであった。
文＝康 熙奉（カン・ヒボン）
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