ソナとサンヒョクは結婚式を挙げ、間もなく息子のセビョクも授かり、まだ籍は入れていないものの幸せの絶頂だった。
しかし、サンヒョクの上司であり財閥の娘ユン・ジェギョン(オ・スンア)がサンヒョクを誘惑したことからソナの運命は一転する。ジェギョンもまた彼の子を身ごもり、ソナと息子の存在を知りつつもサンヒョクとの結婚に突っ走る。
ソナの悲劇はジェギョンに夫を奪われたことから始まった。サンヒョクの心変わりを知ったソナの祖母とサンヒョク、ジェギョンが路上で言い争いをするうちに、ジェギョンが祖母を突き飛ばし、頭を打って命を失う。
しかし、サンヒョクとジェギョンはその場から逃げ出してしまう。
次にジェギョンは会社で、自分を脅迫する男を階段から突き落としてしまい、男は死亡する。ジェギョンはソナが男を突き落とすこところを見たという目撃者をでっちあげ、ソナはジェギョンの身代わりに殺人犯として逮捕される。
ジェギョンとサンヒョクの結婚式が華やかに挙行された日、裁判所でソナへの判決が下る。懲役5年。ソナが獄中にいる間、愛する息子のセビョクは病気で死んでしまい…不幸の連鎖はさらに続く‥‥。
一方、ジェギョンの腹違いの兄ユン・ジェミンは、財閥御曹司にも関わらず歌手になることを夢見ていた。
親には米国留学中と嘘をつき、ソウルで演歌歌手として営業にいそしむ毎日。ソナとは親の追跡を逃れて女装している時に出会い、お互い『変態男』『暴力女』と思い込む最悪の出会いだったが、徐々に二人の仲は近づいていく。
ソナの事情を知り腹違いの妹ジェギョンの悪事を知った時、ソナの復讐の協力者に、そして恋人へと関係は発展していく。
だが、ジェミンが『二番目の夫』になるには、越えることのできない障害がひそんでいた……。
4年後、ソナが仮釈放されて出獄する。流産を隠すためにフランスに渡っていたジェギョンとサンヒョクは財閥のトップであるジェギョンの父を騙すため養子を実子だと偽り帰国する。
また、ジェミンも米国支社から帰国し、ついにジェギョンとサンヒョクへ対するソナの復讐戦が幕を開ける。秘密と嘘、拉致、殺人、別人に化けての復讐、契約結婚などなど、加速度を上げた怒涛の展開で最終話へとなだれ込む。
物語が進んでいくにつれ、復讐劇以外の別のテーマが潜んでいることに気付く。それは<血縁の帝国>とその崩壊だ。
ジェギョンとジェミンの実父である財閥グループ会長テグクは最初、ワンマンで愛妻家として描かれる。息子のジェミン、ジェギョンとサンヒョクの娘夫妻を屋敷に住まわせ、夕食は屋敷の食堂で共にする。孫のテヤン(実は養子)を後継者だと可愛がる。
彼が信奉するのは血の同一性で、大名家や商家などバカ息子を排除して養子に注がせるのが当たり前の日本的な<家>ではない。ジェギョンの悪事も、結局は血のつながった娘だからと許される。
しかし、その堅固に見えた帝国も、ソナの復讐と共に揺らぎだす。
まず帝国の成立が闇に包まれていることが分かり、理知的で貞淑、夫を愛しているように見えた妻ヘランの存在にも疑惑が走る。
後継者ジェミンの離反、そしてそれに<出生の秘密>が絡み合い、最終的には帝国の崩壊を招く。不幸のどん底に落とされた女の捨て身の復讐劇と、血縁を捨ててそれを助ける者、血縁を信じた者の没落。最終話までまさに目が離せないドラマだ。
文=大塚毅彦(翻訳者)
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