『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』は、とにかく見始めた人が暗い気分になって辛くなる。
ドラマは序盤からヒロインの生活ぶりを丹念に追っていくが、悲惨な境遇が明らかになり、借金取りから暴力までふるわれてしまう。
しかも、夜なのに部屋の電気もつけない。当然ながら画面は暗く、なお一層視聴者は暗澹(あんたん)たる気分になってしまう。
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結局、耐えきれなくなって序盤だけで見るのを放棄する……それが『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』というドラマでよく起こった出来事だ。
しかし、続けて見ていくと、ヒューマンドラマとして稀に見る傑作であることが徐々にわかってくる。
イ・ソンギュンが演じる主人公のドンフンは大手建設会社の部長であり、正直で一生懸命に生きている。ただし、夫婦関係もよくなく、社内的にも左遷させられている。そんな鬱屈した日々の前に現れたのが、派遣社員のジアンだ。IUが真摯に演じている。
ドンフンとジアンのいがみあうような関係が最初は続くが、やがて2人は相手を強く感じながら人生の足りない部分を必死に探そうとしていく。その過程でからんでくる多彩な人々がとてもいい。
ドンフンの兄弟、母親、地元(後渓〔フゲ〕という架空の街)の仲間、なじみの酒場のママ、会社の部下……そういう人たちがドンフンの心の支えであり、やがてはジアンに救いの手をさしのべていく。
序盤を乗り切った視聴者はどんどんドラマの面白さにハマッていく。なにしろ、卓越した脚本、創造的な演出、魅力的な出演陣によって制作したドラマのクオリティは本当に素晴らしい。特に、終盤に向けて一気に盛り上がっていくストーリーは、過去に見たどんな韓国ドラマを上回るほどの完成度の高さを示してくれる。
このドラマが韓国で放送されたのは2018年であったが、年ごとにクチコミでドラマの良さが知れ渡って、見た人の誰にとっても「マイ・ベストドラマ」の上位にランクされるようになっていく。
まだ見ていない人は幸せである。この年末年始の長い休みで『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』を一気に見ることができるのだから。
特に序盤で見るのをやめた人は、もう後悔しないために、改めて最初から見てみよう。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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