コン・ユが主演した『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』は、放送から何年が経っても高い人気を維持して、新たな視聴者も獲得している。
これほど息がないドラマだということが傑作の証明でもあるのだが、作品の特徴をいえば、主人公の設定がとても奇抜だということに尽きる。
なにしろ、コン・ユが演じるキム・シンは、900年以上も前の高麗(コリョ)時代の将軍なのだ。そんな男が現代まで生き続けているというのが、『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』のメインテーマなのである。
それならば、なぜキム・シンはそんなに長く生きる必要があったのか。
それは、彼が国王に裏切られて、胸に剣を刺したまま、死ぬことができずに現世をずっとさまよっていたからだ。
そして、「トッケビの花嫁」という女性にめぐりあって、胸に刺さっている剣を彼女に抜いてもらえば、それから安寧の世界に帰ることができるのであった。
こういう奇想天外の設定を持っている『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』なのだが、基本は現代劇であるにしても、キム・シンが本来生きていた高麗時代の描写も随所に織り込まれている。そういう意味で、『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』は時代劇の要素もたっぷりと入っている。
もともと、ドラマではキム・シンが1080年頃に生まれたという設定だ。そして、キム・シンが将軍だったのは12世紀前半で、当時の高麗王朝の国王は、16代王・睿宗(イェジョン)だった。
つまり、忠臣であったキム・シンを裏切ったのは睿宗ということになりそうだ。ドラマでは国王とキム・シンの関係も描かれていて、それが『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』のアナザーストーリーにもなっていた。
このような背景を持っているキム・シンは、結局は現代に生き続けて、人間の営みは900年以上も前と変わらないことを表していた。
それはまさに「輪廻転生」の人生観であり、「人は生きて、死んで、また生きて」の繰り返しであることが、キム・シンの生き方を通してドラマで一番描かれていた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【関連】コン・ユ主演の『トッケビ』は時代劇のキャラクター設定が面白い
前へ
次へ