イ・ビョンホンが2012年に主演した映画が『王になった男』だった。この作品は、15代王の光海君(クァンヘグン)と同じ顔をしている道化師が影武者になるという話で、『トンイ』で成功したハン・ヒョジュが王妃の役で出演していた。
それ以前のハン・ヒョジュという女優のイメージは、明るくてハツラツとしたものだったが、『王になった男』では雰囲気が変わっていた。
彼女が扮した王妃は、自分と家族を陥れようとする陰謀の中で必死に自分を律する性格の女性で、理性を失って変わっていく夫の光海君を心配していた。
それが、いつのまにか変わった光海君の姿に少しずつ笑いを取り戻していく。そんな役柄でハン・ヒョジュは繊細な演技を見せていた。
彼女にとって、時代劇は『トンイ』に続いて二度目だ。気品あふれる美しい韓服姿と悲しみをたたえた深みのある表情は、とても好評だった。
しかし、ハン・ヒョジュという女優の知名度に似合わないくらい、セリフが少なかった。イ・ビョンホンとハン・ヒョジュが並んでいるポスターを見て意外な思いを抱いた人も少なくなかった。
この点について、ハン・ヒョジュは制作発表会でこう語っている。
「シナリオをいただいたときからセリフは多くなかったですね。イ・ビョンホン先輩と一緒にポスターに出てもいいのかな、と思いましたし、恐れ多かったですね」
彼女はそう謙遜したが、映画の内容が気に入って出演を決心しただけに、存在感は抜群だった。
演じた王妃は、家族を失い、夫の心まで失ってしまった非運の女性だ。しかし、王妃であるがためにすべての痛みを心に抱いて暮らさなければならない。ハン・ヒョジュはそのような王妃の心境をセリフ一つ一つと寂しげな目で表現した。
「王妃の心を表現しようと努力をしました。撮影の間はずっと王妃になりきって暮らしていて、話すことも控えて、笑わずに物静かにしていました。私の本来の性格を知らないスタッフたちは私を誤解しているようです」
こう言ってハン・ヒョジュは快活に笑った。
彼女は、『トンイ』では側室だったが、『王になった男』でようやく王妃に昇格したのであった。
構成=康 熙奉(カン・ヒボン)
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