キム・スヒョンの演技を初めて見たドラマは、2011年に韓国で放送された『ドリームハイ』だった。
このドラマは、ペ・ヨンジュンとパク・ジニョン(J.Y.Park)が共同でプロデュースする作品だということで、とても話題になっていた。
特に主役コンビが注目されていたが、女性主人公はペ・スジが抜擢され、男性主人公はキム・スヒョンが選ばれた。
キム・スヒョンは、新人ながら大成する可能性を見せていた。彼が演じたのは、とんでもない田舎からソウルの芸能高校に入学してくるソン・サムドンという高校生の役だった。
彼は、純粋な俳優出身だが、他の共演者たちはみんなK-POPの出身者たちだ。それだけに、キム・スヒョンとしても唯一の俳優デビュー組としてそれなりの貫録を示さなければならなかった。
その点で、キム・スヒョンの演技はスケールの大きい器であることを感じさせた。明るいキャラクターで天才肌のセンスを持つ役だったが、ぎこちない演技を見せた共演者とは違って安定感のある演技を披露していた。
彼の貢献も大きく、『ドリームハイ』はドラマとして大成功を収めた。これをきっかけに、キム・スヒョンにオファーが殺到するようになり、その末に選んだ作品が『太陽を抱く月』だった。
誰が考えても難しい役になることは想像できた。キム・スヒョンが扮した国王のフォンは、初恋の人をいつまでも忘れられず、心に深い傷を持っていた。
それだけに暗い表情の場面が続く。誰も信じられないという懐疑的な雰囲気を常に抱えていた国王なのだ。
そんなフォンが、亡くなったはずだと思っていた初恋の人に似た女性と間近に接するようになった。
冷静でいられるわけがない。ハン・ガインが演じたウォルを前にすると、フォンは心を乱されてしまうのだった。
まさに『ドリームハイ』で演じたソン・サムドンとは、180度違う役柄だった。キム・スヒョンも大いに悩んだことだろうが、尊敬するペ・ヨンジュンのアドバイスを素直に受け入れながら、キム・スヒョンは自分なりの国王像を築いていった。
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『太陽を抱く月』は終盤を迎えると、ウォルが記憶を取り戻す場面に入っていく。それにつれて、フォンの心境が目まぐるしく変わっていく。
こうした変化に対応しながら、キム・スヒョンは人間の奥底にある感情の渦を1つ1つ見せていった。まるで10歳ほど年を重ねたような熟練した演技だった。多様性という意味でも、キム・スヒョンの俳優としての資質はとても優れていた。
これからクライマックスに向けて、キム・スヒョンの演技の奥深さをさらに堪能しよう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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