『愛の不時着』で主役として大いに注目されたヒョンビンは、日本でも過去の作品がよく見られるようになった。
そんな中で、ヒョンビンの出世作といえば、もちろん『私の名前はキム・サムスン』(2005年)である。
このドラマの中で、ヒョンビンが演じた財閥の御曹司が、済州島(チェジュド)の漢拏山(ハルラサン)を登るキム・サムスン(キム・ソナが演じた)を追いかけていく場面がとても印象深かった。
ヒョンビンが語る。
「実は、そのシーンを撮影する日に朝の5時まで撮影をしていました。その後、空港に行き済州島に到着すると、すぐ山に登りました。山に登る時間だけでも4時間かかり、降りてくるころには日が暮れる時間になっていました。
また、その日は寒くて雨まで降っていて、セットしたヘアスタイルもボサボサになってしまいました。でも、この作品がきっかけとなって順調に活動することができました。
そのような機会を作ってくれた恩人がキム・ソナさんです。私にとって彼女は先輩であり、良いお姉さんです。本当にやさしい方です」
このように、ヒョンビンはキム・ソナに対する感謝を強調していた。
さらに、ヒョンビンの過去の作品で評価が高いのが、映画『王の涙 イ・サンの決断』(2014年)であった。
この映画は朝鮮王朝の22代王・正祖(チョンジョ)を描いている。ヒョンビンは、朝鮮王朝の正式な歴史書『朝鮮王朝実録』に出てくる正祖の記述をとても詳しく読み込んだ。そのうえで、「あえて、正祖を描いた他の作品を見ようとしませんでした」と語った。
つまり、自分なりに新しい正祖を演じたいと意欲をみなぎらせたのだ。
「脚本を何度も読むと、正祖は自分の命を守るために、苦しい環境の中で鍛練を続けました。それで、私もからだを鍛えました。トレーニングと撮影を一緒に行なったので1日3時間しか眠れませんでしたし、からだを絞るために食事も制限しました」
ここまでヒョンビンは徹底した。
「とても過酷な撮影でしたが、俳優活動を休止して兵役中だったときにずっと演技をしたいと渇望していたので、最後までやり遂げることができました」
そう語ってヒョンビンは時代劇の主役をやりきった充実感に浸った。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)
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