ナ・イヌは、作品ごとに異なる表情を見せながら、多面的な魅力で観る者を惹きつける稀有な存在である。柔らかな物腰と凛とした眼差しを併せ持ち、時に温かく、時に鋭く心を打つ演技は、見る者の記憶に深く刻まれる。
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そのナ・イヌが出演する日韓合作ドラマ『初恋DOGs』は日本のTBSで放送されている。本作で彼が演じるのは、韓国の巨大財閥に生まれた御曹司ウ・ソハ。幼少期の喪失や複雑な家庭環境により、心の奥に孤独を抱える青年である。
そんな彼が、一匹の犬を通じて他者と出会い、反発し、心を通わせていく物語は、表面的な恋愛を超えて、癒しと再生のプロセスを丁寧に描いている。
ナ・イヌは、この不器用で繊細なキャラクターを、決して大仰にならず、自然体で演じきる。だからこそ、ウ・ソハの抱える葛藤や変化が、観客の心にそっと寄り添うのだ。
彼の多彩な表現力は、これまでも様々なジャンルの作品で証明されてきた。たとえば、時代劇『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』では、武骨で純粋な戦士オン・ダルを演じ、激しい運命に翻弄されながらもひたむきに愛を貫く姿が話題となった。
また、社会派ドラマ『クリーニングアップ』では、清掃員たちと同じ屋根の下で暮らすミステリアスな下宿人イ・ドゥヨン役として、静かな中にも存在感を放った。
一方で、ファンタジー要素の強い『ジンクスの恋人』では、商店街の魚屋として生きる青年コン・スグァンを演じ、運命と向き合う不器用な優しさを繊細に表現。さらには、タイムリープ復讐劇『私の夫と結婚して』では、冷静でありながらどこか儚げな雰囲気をまとうユ・ジヒョク役で、知的で包容力のある男性像を体現した。
ナ・イヌの魅力は、どの役柄にも“魂”を込める真摯な姿勢にある。その芝居には、キャラクターの人生に対する理解と慈しみが感じられ、ただの演技以上の“生”が宿る。だからこそ、観客は彼の演じる人物と心を重ね、物語の一部となるのである。
近年ますます活躍の場を広げるナ・イヌ。彼が描くキャラクターたちは、それぞれ異なる境遇にありながら、痛みや希望を通じて観る者の心にそっと触れる。演じることを超えて、生きることを映すそれこそがナ・イヌという俳優の最大の魅力である。
なお、ナ・イヌが出演している日本のTBSで放送中のドラマ『初恋DOGs』は、韓国では7月2日からTVINGにて独占配信されている。
文=大地 康
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