朝鮮王朝の22代王・正祖(チョンジョ)は、国王として成し遂げた業績が傑出していた。彼の政治運営において今も称賛の声が絶えないのは、卓越した人材を公平に登用した点である。
【関連】名君として多くの功績を残した正祖はなぜ命を狙われたのか
彼は即位前より、ただ身分が低いという理由で才覚ある者が日の目を見ることなく埋もれていく様子を幾度となく見てきた。それは国家にとって計り知れない損失であり、彼の胸にはいつしか、理不尽さを正すという燃えるような志が宿っていた。
正祖は身分制度の束縛を極力取り払い、真に才能がある人が能力を存分に発揮できる場を築くことに心血を注いだ。こうして正祖は大胆に制度を改革した。選び抜かれた俊英たちを積極的に登用し、彼らに高い地位を与えたのである。
その方針は見事に実を結んだ。官僚組織は柔軟な運営のもと活気に満ち、人々は生き生きと能力を競い合った。その知的熱量はやがて宮廷全体を活性化させた。
この名君の姿を主軸に描いた時代劇『イ・サン』。正祖を演じたイ・ソジンは、物語の幾重にも折り重なるテーマの中で、名君の業績よりも、ヒロインとなったソンヨンとの愛に焦点を当てた。彼はこう語る。
「たとえば、ソンヨンとの関係においても、現代劇のように胸が高鳴る恋愛を、よりロマンチックに表現したかったのです」
イ・ソジンの言葉からは、「従来の時代劇に縛られないで、新たな感性で愛を演じたい」という熱意が伝わってくる。実際に、ソンヨン役のハン・ジミンは清楚な気品を表現する演技で視聴者を魅了した。イ・ソジンはさらにこう述べる。
「このドラマは、共演者と長い時間をかけて作り上げた作品であり、仲間と楽しく撮影しました。ハン・ジミンさんとも呼吸がぴったり合いました」
この作品において、主人公・正祖の偉大さを際立たせることは不可欠であった。しかし、イ・ソジンはそこに現代的な感覚を織り込み、新たな視点で物語に生命を吹き込んだ。その結果、歴史劇でありながら、より広がりのある世界観を生み出すことに成功したのである。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【関連】イ・ソジンが語ったレジェンド時代『イ・サン』の思い出
前へ
次へ