イケメン俳優のイ・ドンゴンが演じているので、『七日の王妃』に出てくる燕山君(ヨンサングン)は、それほど暴君らしくない。確かに、異母弟の晋城大君(チンソンデグン/後の中宗〔チュンジョン〕)をイジメ抜いていて性格の悪さが出ているが、それでも悪行に対して抑制も効いている。つまり、一応の分別がある、ということだ。
【写真】【『七日の王妃』の暴君】燕山君の側室の数ははるかに少なかった!!
しかし、史実の燕山君は、情状酌量の余地がまったくなかった。まさに、暴虐な「悪魔の王」そのものだった。
その典型的な出来事が、祖母の仁粋大妃(インステビ)に暴行を働いた事件である。
朝鮮王朝の歴史において、仁粋大妃がどれほど凄い女性だったのか。
彼女は、燕山君の父親であった成宗(ソンジョン)の母親として歴史上であまりに有名だが、それだけではなく、518年間続いた朝鮮王朝の王族女性の中で一番頭が良くて学識に優れていた、と言われている。
王族女性の中には文字を読めない人もかなりいたが、仁粋大妃はその正反対で、学者並みに漢字に熟知していた。さらに、王族女性の教科書と言われた「内訓(ネフン)」を自ら執筆している。以後、王族女性の礼儀作法と心構えを解説したこの「内訓」は高貴な方々の必読書になった。
こうして、「史上最高の大妃」と称賛された仁粋大妃だったが、彼女は1504年に燕山君から暴行を受けている。
なぜ、そんなことが起きたのか。
燕山君の実母の尹氏(ユンシ)は仁粋大妃に嫌われたことが直接的な理由になって廃妃(ペビ)になったのだが、その事実を燕山君が知るようになり、彼は祖母に対して敵愾心(てきがいしん)を持った。そして、たまたま燕山君が自分の行動を仁粋大妃から咎(とが)められたとき、彼は逆上して祖母に暴行を加えてしまった。
それが原因で仁粋大妃は亡くなったという。
本当に、燕山君は罪深き暴君だった。『七日の王妃』ではスターのイ・ドンゴンが演じているので、そこまで暴君というイメージはないのだが……。実際は暴虐な男であった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【写真】【悪役となったイケメン】『七日の王妃』で燕山君を演じるイ・ドンゴン
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