最近韓国でトレンドといわれている「テキストヒップ」。これは文字を意味する「TEXT(テキスト)」と、流行に敏感でクールなことを意味する「HIP(ヒップ)」を組み合わせた造語だ。
作家ハン・ガン氏が2024年にノーベル文学賞を受賞したことも追い風となり、韓国では10~20代のZ世代を中心に書籍購入率が増加しているらしい。若者に人気のK-POPアイドルもまた、忙しいスケジュールの合間を縫って読書を楽しんでいる人が多いのだ。
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そこで、今回はアイドルたちの愛読書をピックアップして紹介する。
◆ジェミン(NCT DREAM)
『どうかご自愛ください 精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン(原題:자존감 수업)』
ユン・ホンギュン著、岡崎暢子訳、ダイヤモンド社
韓国の有料ファンコミュニケーションアプリ「bubble(バブル)」で紹介された書籍。精神科医の著者がさまざまな悩みに対して、「自尊感情(≒自己肯定感)」を高めるための具体策やポイントを指南している。
この本はジェミンがファンに薦めたことで、売上が前月比114%増加したという。ファンの一人は「自己肯定感を高めてくれる本の内容が、社会人生活をしていくうえで助けになっている」と話す。推しが同じ本を読んで自分を鼓舞させていると思うと、「私も頑張ってみようかな」となる気持ちは、同じオタクとしてなんだか分かる気がする。個人的にアイドルにも愛読書をどんどん紹介してほしい。
ちなみにこちらは、邦訳版がダイヤモンド社より刊行されている。ジェミンペンさん、そしてたくさんのシズニに届きますように。
◆チソン(NCT DREAM)
①『今夜、世界からこの恋が消えても』一条岬著、メディアワークス文庫
②『今夜、世界からこの涙が消えても』一条岬著、メディアワークス文庫
③『君の膵臓をたべたい』住野よる著、双葉社
韓国の雑誌『Y magazine 와이매거진』の愛用カバンの中身を紹介するインタビューで、持ち歩いている本3冊として紹介された。
チソンが「一番好きなアニメであり、今までの人生で出会った中で最高の作品」と話すのが『君の膵臓をたべたい』。日本でも劇場版アニメや実写化などがされている超人気作品だ。
「最初にアニメを見て、とても面白かったので本も買ったケースです」とのこと。家族と休暇で日本旅行に来て『君の名は。』の聖地巡礼をするほど、日本のアニメが好きなチソン。日本人ながらあまりアニメに触れてこなかった筆者だが、今度挑戦してみようかなと思う。アイドルが好きな本を紹介してくれることで、普段自分からあまり手に取らないジャンルの本と出会えるのもうれしい。
◆ソンチャン(RIIZE)
『人はなぜ存在するのか この答えがあなたを悩みや不安から解放する(韓国語版タイトル:나는 단단하게 살 것이다 흔들리지 않는 견고한 나를 만드는 법)』齋藤孝著、実業之日本社
RIIZEの公式チャンネルでソンチャンがおすすめした一冊だ。「MusicBank in ベルギー」へ向かう飛行機の中で、最近読んでいる本として紹介。「齋藤孝さんの本をたくさん読んでいる。今回は、人はなぜ存在するのか(韓国語タイトル:나는 단단하게 살 것이다)を読んでみようと思っている」とYouTubeの中で話していた。
本の内容としては「人はなぜ、存在しているか」という問いかけに対して、多角的に考えて自らの存在意義を確かにしていくというもの。日本の読者からは「思考法の本のようだ」という声も。この本を読みながら、ソンチャンは何を感じ取り、考えたのだろうか。そんなことが気になった筆者であった。
◆カリナ(aespa)
『わたしに無害なひと(原題:내게 무해한 사람)』チェ・ウニョン著、古川綾子訳、亜紀書房
オンラインサイン会でファンからの「面白かった本のタイトルを教えて」という質問に対して、カリナが紹介した作品。邦訳版も刊行されている韓国短編集だ。
「誰も傷つけたりしないと信じていた。苦痛を与える人になりたくなかった」。人間は誰かを傷つけていて、自分自身が「無害な人」であり続けることはできない。そんな自分自身の加害性や傷を見つめ直すことで、社会に存在するさまざまな問題と向き合っていこうというメッセージが込められた作品だ。チェ・ウニョンさんの作品はこの他にも『ショウコの微笑』『明るい夜』が日本語で読める。
◆ウォニョン(IVE)
①『超訳 ブッダの言葉』小池龍之介著、ディスカヴァー・トゥエンティワン
②『40歳で読むショーペンハウアー(마흔에 읽는 쇼펜하우어 마음의 위기를 다스리는 철학)』カン・ヨンス著、ユノブックス
肯定的に物事を捉える「ウォニョン的思考」、通称「ラッキービッキー(幸運という意味の英単語ラッキー+ウォニョンの英語名ビッキーを組み合わせた造語)」が韓国メディアで取り上げられ、話題となったことを知っているK-POPファンも多いのではないだろうか。
そんな彼女の思考のベースともいえる読書。『デックスの冷蔵庫インタビュー』で『超訳 ブッダの言葉』について紹介しており、「仕事をしてつらい時に、ブッダの言葉を読むと慰められるし励まされる」とのこと。
また、チャン・ドヨンの『Salon Drip2』では、趣味は読書と話す場面で『40歳で読むショーペンハウアー』を紹介。論語を読むのも好きと語っている。
特にショーペンハウアーは、『幸福について』や『読書について』など、日本語で読めるものも多い。哲学書や仏教は一見するととっつきにくいかもしれないが、ウォニョンがおすすめしてくれたのをきっかけに頑張って読破してみよう!と心に決めたファンも多いのでは?
韓国人作家の作品はもちろん、日本の書籍を読んでいるアイドルが意外と多いことに驚いた。読書をはじめるきっかけが「大好きなアイドルが読んでいたから」「本を読む姿がなんかかっこいいから」「装丁がかわいいから」でも構わない。まずは一冊、手に取り読んでみることが大切なのだ。日本でも、本を読む人がもっともっと増えていくことを願う。
文=豊田 祥子
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