イ・ビョンフン監督は本当に面白い時代劇を作る。まずはストーリーがよくできているし、キャスティングが豪華なメンバーだし、登場する施設が臨場感たっぷりだ。
そういうイ・ビョンフン監督の手腕によって、『宮廷女官 チャングムの誓い』『イ・サン』『トンイ』『オクニョ 運命の女(ひと)』といった傑作が生みだされてきた。
そんなイ・ビョンフン監督の制作スタイルを具体的に見てみよう。
彼は、困難な境遇の中で育った主人公が、様々な努力の末に自分の道を切り開いていくという成功物語が大好きだ。『宮廷女官 チャングムの誓い』もそうだし、『トンイ』や『イ・サン』もそうである。
また、ドラマの最終回ではハッピーな展開を好む傾向があり、長いドラマでも終わりまで安心して見ることができる。たとえば、『イ・サン』がそうだ。
このドラマの主人公である正祖(チョンジョ)は、多くの韓国人が「毒殺されたのではないか」という印象を持っている。正祖毒殺説はあまりに有名なのだ。
しかし、『イ・サン』ではクライマックスまで見ても、毒殺はまったく出てこなかった。いかにも、正祖は大きなことをやり遂げたうえで世を去った、という展開だった。
イ・ビョンフン監督は、毒殺説を採用することによって悲劇的な結末になることを避けたのである。
これが具体的な例だ。常に希望が持てる形でドラマを終わらせるのが、イ・ビョンフン監督の一番大きな信条になっている。
メインとなる出演者については、若くて経験の浅い女優でも大胆に抜擢する傾向がある。『トンイ』のハン・ヒョジュ、『オクニョ 運命の女(ひと)』のチン・セヨンもそうである。
イ・ビョンフン監督は経験豊富な女優に頼るのではなく、新人でもいきなり主役に選んだりする。そういう大胆なキャスティングをするのもイ・ビョンフン監督の特徴であり、それが成果を生んでいる。
つまり、イ・ビョンフン監督に育てられて時代劇のスターになった女優も多いのだ。このように、イ・ビョンフン監督は人気俳優の育ての親としても力を発揮している。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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