時代劇の巨匠、イ・ビョンフン監督の2010年。賎民出身でありながら、19代・粛宗(スクチョン)王の側室となった淑嬪崔氏(スクピン・チェシ)の波瀾万丈な人生と、息子である英祖(ヨンジョ)王の劇的な成長を描いた時代劇。
淑嬪崔氏と同時代に生きた張禧嬪(チャン・ヒビン)の生涯があまりにも強烈なため、クローズアップされることはなかったが、イ・ビョンフン監督は英祖の母となる人物の成長過程とサクセスストーリーを独特の感性から見事に描きだした。
ちなみに淑嬪崔氏の本名は歴史には残っておらず、トンイとはイ・ビョンフン監督がつけた架空の名前でもある。
明るくて天真爛漫な主人公・トンイを演じるのは、時代劇の『一枝梅』や『春のワルツ』に出演した女優ハン・ヒョジュ。一方、粛宗役を『チャングムの誓い』で日本でもなじみのあるチ・ジニが好演した。
また、これまで粛宗と張禧嬪の恋は、悲劇的な末路のために、今までは重く描かれてきたが、『トンイ』では違った。
粛宗は恋に目が眩んで、国政を軽んじた浪漫主義者ではなくダンディな君主に。張禧嬪もまた“悪女”ではなく、気品のある凛とした人物として描かれている点もおもしろい。
さらに撮影現場で臨場感あるライブ演奏を収録するために、“国立国楽院”のプロの団員を常駐させた。質の高い演奏と音楽にも耳を傾けてみよう。
1680年3月の深夜、ある湖畔で大司憲チャン・イクホン(イ・ジェヨン)が殺害された遺体が発見される。
この事件に対して、捕盗庁の従事官ソ・ヨンギ(チョン・ジニョン)は、今回の殺人も賎民らの地下組織の首領チェ・ヒョウォン(チョン・ホジン)が率いる剣契(コムゲ)の仕業だと断定する。
しかし、この殺人事件は実は西人派を反対する南人派の中枢オ・テソク(チョン・ドンファン)による陰謀だった。
相次ぐ殺人事件で濡れ衣を着せられたチェ・ヒョウォンの娘、トンイ(ハン・ヒョジュ)が死ぬ直前のチャン・イクホンを偶然にも目撃していたことを知り、逃がそうとするが、罠にはまって捕らえられてしまう。
だが、剣契のチャ・チョンス(ペ・スビン)によって、逃げることに成功したトンイは、芸妓ソリの紹介で掌楽院(チャンアグォン)に入る。
一方で王宮では粛宗王から寵愛を受けていた、チャン・オクチョン(イ・ソヨン、のちの張禧嬪)が再び宮中に戻る問題が浮上していた…。
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