10月29日からBS日テレで放送中の韓国時代劇『朱蒙(チュモン)』は、韓国放送時(2006~2007年)に最高視聴率52.1%(首都圏基準)を記録し、“国民的ドラマ”としての地位を確立した。
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主演を務めたソン・イルグクやハン・ヘジンらの人気も爆発的で、2006年の「MBC演技大賞」ではソン・イルグクが大賞、ソン・イルグク、ハン・ヘジン、チョン・グァンリョルが最優秀演技賞、キム・スンスが優秀賞を受賞するなど、『朱蒙』のキャスト陣が主要部門を総なめにしている。
特にソソノ役を演じたハン・ヘジンは、時代劇にふさわしい端正な顔立ちと安定した演技力で高い評価を受け、“国民的女優”の仲間入りを果たした。
前作『がんばれ!クムスン』で顔を知られるようになった彼女がトップスターへと駆け上がることができたのは、何と言っても『朱蒙』のおかげだった。しかし当時、彼女にとってその『朱蒙』の撮影は“恐怖そのもの”だったという。安定感ある演技で知られていた彼女にも、想像を超える苦悩があった。
ハン・ヘジンは当時を振り返り、「ソソノが持つ気品や上品さを自然に表現しなければならなかったのですが、それがなかなかうまくいかず、苦しかったです。『がんばれ!クムスン』のときはNGを出さないことで有名だったのに、今回はセリフが口に馴染まず、難しい言葉も多くて心に余裕がありませんでした」と語っている。さらに、「『クムスン』で演技を楽しむ自信を得たのに、『朱蒙』では逆に挫折し、萎縮してしまいました」とも明かした。
当時はまだドラマの事前制作が一般的ではなく、放送中もリアルタイムで撮影が行われる時代だった。だが、放送の中盤を過ぎたあたりから、彼女はその苦しみを成長の糧に変えることができたという。
「こういうときにどう楽しめばいいかが分かるようになりましたし、謙虚さも学びました。ソン・イルグクさんなど先輩たちを見て、誠実さの大切さも感じました。ソソノを通して度胸がつき、俳優としても人としても大きく成長できました」
『朱蒙』は当初60話構成で企画されていたが、あまりの人気のため21話延長され、最終的に全81話に。そのため過酷な撮影スケジュールが続き、スランプを経験していたハン・ヘジンにとっては、心身ともに大きな負担となった。放送終了後、彼女が1年間演技活動を休止したことからも、当時の大変さがうかがえる。
ハン・ヘジンは2013年のトーク番組でこう振り返っている。
「『がんばれ!クムスン』のときは褒められることが多くて、自分は演技がうまいと思っていました。でも『朱蒙』では主人公で、しかも実在の人物を演じるプレッシャーが大きく、監督からもよく叱られ、自分の限界を痛感しました。当時は撮影現場に行くのが怖かったし、次の作品に取り組むのも怖くなってしまったんです」
その経験から、彼女はしばらく時代劇に対して苦手意識を持つようになったという。しかし、その壁を乗り越えるきっかけとなったのが、2010年放送の『済衆院(チェジュンウォン)』だった。
『朱蒙』後、『済衆院』で時代劇復帰を果たした理由について、ハン・ヘジンは「『朱蒙』のイメージが強く残っていて、ずっと時代劇に出演することをためらっていました。でも『テロワール』で失敗も経験し、もう一度挑戦してみようという気持ちが芽生えたんです」と語っている。
さらに、「監督から『この役はハン・ヘジン以外は考えたことがない』と言われて心を動かされました。これまでは他の人がやろうとしていた役を運よく私がやることも多く、運も良かったので」と明かし、監督の信頼に応えた。
視聴者が知ることのなかったハン・ヘジンの葛藤があったからこそ、『朱蒙』の中のソソノはより強く、魅力的な女性として輝いたのかもしれない。
(文=韓ドラLIFE 編集部)
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