テレビ東京の韓流プレミアで放送中のドラマ『トンイ』で、8月25日に放送された第16話は、物語全体に鮮烈な転換点を刻む回である。
宮廷を舞台にしたこの一時間は、真実を貫こうとする1人の女性の揺るぎない勇気と、権力を死守せんとする者たちの執念が、絢爛たる緊張感の中で火花を散らす場面に満ちている。
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視聴者は、主人公トンイ(演者ハン・ヒョジュ)の気高さと儚さ、そして王宮に渦巻く愛憎の嵐を余すところなく体感するのである。
幕開けは、清国の使臣の前に立たされるトンイの姿から始まる。目の前に運ばれた遺体が“キム・ユンダル本人”と断じられるが、彼女は瞬時にその矛盾を嗅ぎ取る。
冷徹な観察と鋭敏な直感を重ね、これは別人であると断言し、わずか3日のうちに本人を見つけ出すと約束する。
この場面には、状況に押し流されず事実を直視する彼女の強靭な精神が鮮烈に描かれている。
その一方で、宮廷内部では嫉妬と焦燥が渦を巻いていた。朝鮮王朝第19代王・粛宗(スクチョン/演者チ・ジニ)とトンイの距離が近づくにつれ、チャン・オクチョン(張玉貞/後の張禧嬪〔チャン・ヒビン〕で演者はイ・ソヨン)はトンイに嫉妬する様子を見せる。とりわけ、王がトンイのために軍を動かそうとしたことを知った瞬間、彼女は衝撃を受ける。粛宗はその揺らぐ心を察しながらも、宴を開いて彼女を慰撫し、正式に側室として迎える決断を下す。
これは愛情の証であると同時に、宮廷内の権力均衡を保つための政治的な一手でもあった。愛と権力のせめぎ合いが王の苦悩を映し出し、物語に深い陰影を加えている。
さらに、舞台裏で蠢くのはチャン・オクチョンの兄である張希載(チャン・ヒジェ/演者キム・ユソク)の暗躍である。彼はユンダルを密かに江華島へ逃がし、その死を偽装する計略を進める。
そして、その企てに関わるのがトンイのかつての同志であったチャ・チョンス(演者ペ・スビン)であることが示唆される。信頼していた者が敵に回る可能性は、彼女にとって痛烈な試練であり、視聴者に強烈な予感を抱かせる展開である。
この第16話の核心は、“真実を求める者”と“権力に執着する者”との激突にある。トンイの言葉と行動は、1人の女性の勇気を超え、社会の底辺に生きる人々の代弁となって響く。その姿は、権力に押しつぶされる弱者の希望を象徴している。
一方、チャン・オクチョンやその一派の行動は、宮廷劇が孕む冷酷な現実を体現する。粛宗の選択はその中間に揺れ動く王の苦悩を示し、愛と政治を両立させることの困難を鮮やかに浮き彫りにする。
総じて、第16話は愛と権力、信義と裏切りが複雑に絡み合う濃密な一篇である。トンイの冷静さと勇気、チャン・オクチョンの嫉妬と野望、粛宗の政治的決断が織り成す物語は、視聴者を次なる嵐の予兆へと引き込む。
トンイの歩む先には栄光かさらなる試練か、誰も知らぬ未来が待ち受けているのである。
文=大地 康
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