1970年代の韓国を舞台に展開されるDisney+「スター」独占配信のドラマ『パイン ならず者たち』は、一攫千金を夢見るアウトローたちが沈没船に眠る莫大な財宝を巡り火花を散らすクライム・アクション作品である。
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社会の片隅で生きてきた彼らが、海底から発見された謎の古船とその内部に隠された財宝という獲物を前にして、己の過去と欲望を引きずりながら集結していく。
本作が面白いのは、ただの宝探しではなく、各キャラクターの動機や関係性が複雑に絡み合うヒューマンドラマの側面が強い点だ。
登場人物はみんな、社会から逸脱した過去を持つ者ばかり。冷静な頭脳を武器にする者、心に怒りを抱える者、権力や金に執着する者など、それぞれのならず者が、時に手を組み、時に裏切りながら、利権と命が絡むゲームに身を投じていく。
第1話では、主人公オ・グァンソク(演者リュ・スンリョン)とその甥オ・ヒドン(演者ヤン・セジョン)が登場。小規模な窃盗でしのぐ日々を送っていた彼らに、突如として持ち込まれるのが、中世に沈んだ貿易船の財宝探索という巨大な依頼だ。
ファンタジックな設定の中にも、金と欲望に取り憑かれた人間たちの思惑がリアルに描かれており、序盤から緊張感のある展開が続く。終盤では、リュ・スンリョン、ヤン・セジョン、イ・サンジン、キム・ソンオら演じる4人の男たちがチームを組み、いよいよ財宝を巡る旅へと乗り出す。
続く第2話では、財宝探索の出資者であるチョン会長の妻ヤン・ジョンスク(イム・スジョン)に関する衝撃的な事実が明かされる。
表向きは夫に尽くす淑女として振る舞う彼女だが、実は亡くなったはずの元夫が生きており、彼女の側近として行動していたのだ。
この秘密が明かされることで、ジョンスクの内面や欲望が徐々に浮き彫りとなり、物語はより一層不穏さを増していく。
また、グァンソクたちのチームには新たに船長や潜水士が加わり、賑やかさとともに一抹の不協和音も漂い始める。そこへ登場するのが、財宝を狙うライバル・キム教授という存在だ。
第3話では、そのキム教授が次々と有力な協力者を確保し、財宝に一気に接近。一方のグァンソクたちは内部の揉め事や資金難に悩まされ、状況はますます不利になる。しかし、ヒドンがジョンスクと接触することで資金問題に光明が差す。
特にこの回では、イム・スジョン演じるジョンスクの妖艶さが際立つ。過去には清楚で儚い役柄が多かった彼女が、本作では欲望を剥き出しにした一面を見せ、観る者の印象を大きく覆す。彼女の内に秘めた愛憎と計算は、物語の今後を大きく左右する鍵となるだろう。
クライマックスでは、ついにグァンソクとキム教授、それぞれのチームが夜の海で鉢合わせ。海上で繰り広げられる緊迫した対峙の場面は、これから始まる熾烈な争奪戦の幕開けを強く印象づける。
3話までを通して描かれるのは、単なる宝探しではなく、人間の業や絆、そして裏切りの連鎖。果たしてこの先、誰が生き残り、誰がすべてを手に入れるのか、息をのむ展開が続く。『パイン ならず者たち』は、そんなスリルと人間ドラマの濃密な融合を味わえる注目作である。
文=大地 康
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