ドラマ『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』では、朝鮮王朝15代王の光海君(クァンヘグン)を大物俳優のチョン・ジュノが演じていた。
【写真】チョン・ジュノは『ノクドゥ伝』で光海君の印象をどう変えたのか
このドラマでは光海君がかなりヒステリックな人物として描かれていた。激しい気性で諫言する家臣を殺してしまう場面があったし、不眠症に悩んでいて常にピリピリしていた。
その一方で王妃に対して思いやりを見せて優しい一面を持っていた。そういう意味で『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』では、光海君の多面的な人物像にスポットを当てていた。
実際の光海君は何かと誤解されやすい人間であったが、間違いなく政治的な力量は名君と呼ぶにふさわしいものがあった。それほど頭脳明晰だったのだ。
彼の統治において最も評価すべき点は外交である。光海君は本当に外国の現状をよく捉えていて、朝鮮王朝を守るために最善を尽くしたと言える。
光海君が在位していた1610年代は、中国大陸を支配していた明が斜陽となり、代わって満州で勃興した後金が勢いを増していた。
両国は激しく覇権を争った。そして、明と後金はそれぞれ朝鮮王朝に対して「我が国に加勢せよ」と要請してきた。
板挟みにあって光海君は苦慮した。明は朝鮮王朝が苦しいときに支援してくれた恩人だった。しかし、衰退が免れない状況で朝鮮王朝が加勢すると、後金に恨まれて侵攻を受ける恐れがあった。
熟慮した結果、光海君は恩人の明に対して必要最小限の援軍だけ送り、後金に対しても使者を送って恭順の意向を示した。
いわゆる二股外交である。しかし、小国だった朝鮮王朝としては精一杯の外交であり、これが功を奏した。結局、明は滅んで後金が覇権を握るようになるのだが、朝鮮王朝はかろうじて自国を守ることができた。
しかし、1623年にクーデターが起こって光海君は廃位となった。
すると、どうなったか。
クーデターを成功させた仁祖(インジョ)が次の国王になったのだが、彼は後金を蛮族だと馬鹿にして、ろくに外交をしなかった。
怒った後金に朝鮮王朝は大軍で攻められ、結局は屈服する屈辱を味わった。
外交が巧みな光海君がそのまま国王を続けていれば……。
少なくとも、仁祖のように朝鮮王朝が無惨に敗北することは防げたはずであった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【関連】話題作『ポッサム』にも登場する光海君! 史実ではどんな王だったのか
前へ
次へ