ナムグン・ミンは、沈黙が似合う俳優である。
韓国ドラマは脚本家が饒舌なセリフをよく使うので、必然的に俳優はセリフの数が多くなる。感情の機微は話せば話すほど内面が見えてくる、という雰囲気のドラマ作りが目立つ。しかし、ナムグン・ミンの場合はそうした感情表現が少ない。
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たとえば、彼が2019年に主演した『ストーブリーグ』では、演じたペク・スンスは万年最下位のプロ野球チームを引き受けて斬新な改革を打ち出していった。様々な批判がある中で、ペク・スンスはあえて反論しなかった。
とにかく、自分が信じた改革によって結果を出すことを最優先し、言葉によって対抗勢力を説得したりはしなかった。そんなペク・スンスをナムグン・ミンは寡黙に演じていたが、決して不自然な雰囲気を出していない。それは、彼が沈黙の似合う俳優だからだ。
あわてず騒がず、そして、自分の信じる役を真摯に演じる…それによって、ナムグン・ミンは俳優として評価を高めてきた。
新作の『私たちの映画』でナムグン・ミンが演じるのは映画監督のイ・ジェハである。彼はデビュー作で最高の評価を得たが、その後5年間は新作を作れないでいた。もちろん。彼がスランプに陥っていたのは確かなのだが、それ以上に、過度な演出に走りすぎている現在の映画産業へのアンチテーゼもあった。
彼はもっと純粋に映画を愛していたし、心がこもった映画を作るべきだと信じていた。だからこそ、安易に商業映画に走らず、自分の撮りたい作品を待っていたのだ。
そういったイ・ジェハを演じたナムグン・ミンは、激しく感情を出さず、静かに自分の声に耳を傾けようとしていた。その姿こそがまさにナムグン・ミンの個性だ。彼が今回の『私たちの映画』というドラマを引き受けたのも、饒舌でないキャラクターに自分を投影したかったからかもしれない。
ナムグン・ミンの沈黙には、様々な答えが隠されている。その答えを、イ・ジェハの姿を通して見せてくれるだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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