ナムグン・ミンとチョン・ヨビンが主演している新作『私たちの映画』。日本ではDisney+で配信されているが、日陰の涼しい場所で微かな風を浴びているようなドラマだ。どこか静かで、時間もゆっくり流れている。忙しく場面が切り替わるドラマとは、まったく違う。
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ナムグン・ミンが演じるイ・ジェハは、デビュー作で高い評価を得た映画監督だ。しかし、スランプに陥って、5年間も次回作を作れないで苦労していた。その理由は亡くなった父親にあったかもしれない。
ジェハの父親は巨匠監督のイ・ドゥヨンだ。ジェハはいつも「巨匠の息子」と言われたが、父親を嫌悪していた。それは、女優と不倫していた時に母親が亡くなってしまったからだ。その傷はとても大きい。しかし、父親と同じく監督になったジェハは、むしろ作品づくりの苦労を痛感するようになった。
そんなジェハなのに、父親が1990年代に作った『白い愛』という映画のリメイクを依頼された。この映画をどのように新たに演出したらいいのか。ジェハはいろいろ悩んでいた。主人公となるヒロインは余命が少ない。
そういう心境を知っておきたいと思ってジェハはアドバイザーを探していた。適任者として現れたのが、チョン・ヨビンが扮するイ・ダウムだった。彼女自身も余命が少ないということを宣告されていた。
驚くべきことに、『白い愛』のオーディションにダウム自身が現れてきた。彼女は女優の卵であり、アドバイザーとしてではなく、女性主人公として『白い愛』に関わりたいという。
しかし、そんなことが果たして可能のか、仮にオーディションに合格したとしても過酷な撮影に耐えることができるのか。そういうことを考えれば、ジェハとしてはダウムを受け入れることはできない。それでも、ダウムはとても意欲的だった。
「ぜひ自分がこの役をやりたい」
壮絶な覚悟を持っていた。そこで、ジェハはダウムに告げた。
「条件がある。死んではいけない」
このジェハの言葉によって、『私たちの映画』というドラマは、美しい鳥が大きく羽ばたくような展開をみせていく。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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