韓国時代劇の中で屈指の傑作と称される『宮廷女官チャングムの誓い』には、主演のイ・ヨンエの他にも印象的な俳優がとても多かったが、イム・ホもまた記憶に残る名優であった。彼は、11代王・中宗(チュンジョン)を演じていた。
【関連】【あの人は今】『チャングム』で最高の師匠を演じたヤン・ミギョンのその後
歴史的に中宗という国王は優柔不断な性格であり、愛する端敬(タンギョン)王后を離縁してしまうという汚点も残している。しかし、『宮廷女官チャングムの誓い』に登場していた中宗は、理解力に優れた立派な国王であった。
「時代劇の巨匠」と言われるイ・ビョンフン監督は、中宗を名君という設定にしたのである。しかも、イム・ホが堂々と演じて、ドラマの中の中宗は、国王にふさわしい威厳を持っていた。
特に、物語の中で主人公チャングムは、常に苦しい大ピンチに追い込まれるのだが、その度に中宗が助け船を出してくれた。実際、イム・ホが演じた国王は人間味にあふれていて、魅力的な人物であった。当然ながら、大ヒットした『宮廷女官チャングムの誓い』においてイム・ホの評価はすこぶる高かった。
もともとイム・ホは韓国ドラマ界でも「国王が似合う俳優」と称されていた。1993年にKBS公募俳優の第15期として芸能界にデビューしたのだが、時代劇で国王を演じることが多かった。それだけに、イム・ホにとって『宮廷女官チャングムの誓い』は、自分の得意分野に専念できるハマリ役だったのである。
その後のイム・ホには、国王役のオファーが絶えなかったそうだが、演じる役の多様性を重視する韓国ドラマ界において同じような役が続くのはあまり得策ではない。そう判断したイム・ホは、同じ時代劇でも違うキャラに扮することが多かった。
『鄭道伝〈チョン・ドジョン〉』(2014年)では学者役、『オクニョ 運命の女(ひと)』(2016年)では捕盗庁(ポドチョン)のカン・ソノ役に扮していた。
また、2021年には『太宗 イ・バンウォン~龍の国~』で高官の役を重厚に演じて、さすがの貫禄を見せていた。プライベートでは、2010年に11歳年下の一般女性と結婚している。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【関連】【あの人は今】『チャングム』で憎たらしい悪役を演じたキョン・ミリのその後
前へ
次へ